犬の5倍、収容ネコ殺処分ゼロをーふるさと納税生かす名古屋市新たな目標
ふるさと納税の寄付金で、収容動物の殺処分ゼロを目指す名古屋市動物愛護センター(千種区)の取り組みが成果をあげ、事業拡大につながっている。対象を犬のみで始めた2016年度は、センター開設の1985年以降初めて、犬の殺処分ゼロを達成した。本年度からは収容数の多いネコにも対象を広げ、センターが収容した犬15頭、ネコ約100頭の命を守る活動がつづく。
16年度は1100万円の寄付金集まる
16年度の寄付金は、市内外の約400人から約1100万円が寄せられた。寄付金は、収容した犬の医療費や食費、新しい飼い主を探す譲渡ボランティアたちへ現物支給する、首輪やリードなどの購入に使われた。 ネコも対象となった今年4月からは、名称を「目指せ殺処分ゼロ!犬猫サポート寄付金」に変更。生後間もない子ネコを預かって世話をするボランティア向けに、ミルクや離乳食の支給、子ネコの体温維持に使うペット用ホットカーペットの購入費用などに充てた。ネコを譲渡する際の健康診断やワクチン接種、感染症検査などを行う費用にも活用する。 さらに、人をかんだことがある犬の訓練にも使われた。寄付金制度がなかった場合、殺処分の判断が出たであろう4頭は、現在、センターで訓練や治療を受けて、新しい飼い主捜しを続けている。
収容頭数は犬の約5倍、「オーバーフローのような状態」のネコたち
センター愛護担当の島崎亜紀さんは「犬は、新しい飼い主を見つける活動が落ち着いてできる状況だが、ネコは頭数が多く、オーバーフローのような状態」と現状を説明する。 16年度の犬の収容数は221頭。うち6割弱は飼い主のもとに返り、4割弱は新しい飼い主に引き取られた。一方、ネコの収容数は犬の約5倍となる1087頭。うち飼い主のもとに返ったのはわずか2頭で、譲渡は6割ほど。残った3割強は、衰弱や寿命、病気などが理由で死んだケースも含め、殺処分扱いとなった。 センターがネコを引き取る理由で最も多かったのは「計画外の繁殖」だった。中には、センターの前に置かれていた箱の中に、生後間もない子ネコが入っていたというケースもあった。動物を遺棄した場合は、動物愛護法違反となり、100万円以下の罰金が科せられる。 現状、センター内も飼育スペースが限られ、今以上の収容は厳しい。寄付金を活用するにも、頭数が多い場合はすべてに対応するのが困難となり、最悪、殺処分扱いになる動物がでてしまう。 島崎さんは、自力で生きられない子ネコの数が、収容ネコ全体の6割に上ることを問題視。 「ネコは部屋飼いを徹底し、繁殖希望がない場合は去勢をすることが大切。子ネコが生まれた場合は、まずは自身の周囲で飼える人を探すのも、新しい飼い主をみつける手段」と、飼い主の責任ある行動を呼び掛ける。
寄付金で命つなぎ、問いかける
同センターが収容した犬の中には、小学校などで行う動物愛護教育の際に職員と一緒に出向いて子どもたちと過ごしたり、動物とふれあえるイベント「動物フェスティバル2017なごや」(10月8日、久屋大通公園)に向けて、ドッグダンスを練習したりしている。 ふるさと納税の寄付金で命をつなぎ、個性を発揮する動物たちは、動物を飼うことの意味や責任、命の尊さなどを人に教え、現状の問題を投げかける。 (斉藤理/MOTIVA)