「チー牛こそが女叩きをしている」という偏見…「男性=強者」という思い込みに隠された“弱者男性”という存在
「チー牛こそが女叩きをしている」という偏見
もちろん、世にはびこるのは弱者男性への蔑視だけではない。 「バカマ◯コは、稼いでも男を養わない」 「おっさん女子とか言うけど、おっさんほどの甲斐性が女にあるのかね」 「女がまともじゃないから、男がネットでグチってるだけで、それが嫌なら早くまんさん(女の蔑称)がまともになれよ」 こういった女性差別を、SNS上で発信する弱者男性は存在する。だが、それはごく一部だ。『週刊SPA!2023年10/24.31合併号』の調査によると、弱者男性になった理由を「女性のせいだ」と考える方は、全体の3.6%%にすぎないと判明した。つまり、ネットで女性を叩いてうっぷんを晴らしているのは、弱者でもなんでもない、普通の男性だったり、ときに強者男性たちなのだ。 実際、弱者男性の当事者へヒアリングを実施しても、女性蔑視をする男性はほとんどいなかった。むしろ「女性を憎んでいる弱者男性はいませんか……?」と声をかけて、ようやく見つけることができるか、できないかというレベルだ。 念のために補足すると、筆者が女性だからという理由でインタビューが断られないよう、男性ライターにヒアリングを依頼した。それでも、この結果である。弱者男性=女性を叩くもの、というのは完全なる幻想であろう。 にもかかわらず、SNSでは「チー牛」こそが「女叩き」を行う存在だと誤解されている。そして「チー牛はモテないことを妬んで女性を蔑視している」「弱者男性は女をモノとして扱う」といった偏見が、無邪気にSNSへばらまかれている。
暴力的な男性が、抵抗できない弱者男性を傷つけている
実際に、筆者が男性500名を対象に「女性は感情的になりやすい」「女性はか弱い存在なので、守らなければならない」といった、アンコンシャス・バイアス(差別的な無意識の思い込みの)有無を調査した。結果、偏見がある男性は弱者男性44%、強者男性45%と、その割合に差はみられなかった。 また、「女性は男性から犯罪被害にあいやすい」と思われがちだが、男性のほうが、被害にあいやすい。 「令和4年版 犯罪白書」*では、犯罪被害に遭った被害者の男女比は、男性64.2%、女性35.8%と報告されている。つまり、男性は女性の2倍近くも犯罪に巻き込まれやすいのだ。 一方、加害者についても約77%と男性の方が割合が高い。このことから、犯罪は男性から男性への加害が多いということがわかる。 こういった事実を踏まえると、加害性を持つ男性は、弱者男性を狙う。そして、女性はその弱者男性こそが加害者に見えるとおびえる。この世は弱者男性から見て、あまりにも偏見にまみれた世界なのだ。 実際に先日、フェミニストの上野千鶴子教授が共同親権についてこうXで発言した。 「離婚するにはそれだけの理由がある。妻を殴る蹴る、子どもを虐待する、子育てに関わらない、養育費を支払わない…日本の男に共同親権は百年早い。」 離婚理由の第1位は性格の不一致で、次が浮気だ。離婚には理由があるが、ツートップは親権と無関係である。続く第3位はDVだが、実は横浜市の調査**によると、女性のほうがDV加害者の割合が高いというデータもある。「DVだから加害者は男だ」というのは、それこそが無意識の偏見であろう。 周りから「男性は常に強者である」という偏見を抱かれやすい。そして、実際には弱者である男性も、並べて差別されているのだ。 *「令和4年版 犯罪白書」 https://www.moj.go.jp/content/001387336.pdf **「デートDVについての意識・実態調査報告書」https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/danjo/chosa/h23.files/danjo_datedv19.pdf
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