「僕の個性は、真に生きていること」100歳の影絵作家藤城清治が見つめる“自然”
真に生きていることこそが、創作の源
――藤城さんはウクライナの人々への支援として版画の寄贈や売り上げの一部を寄付するチャリティを行い、また、能登半島地震の被災者にも言葉を寄せていらっしゃいます。今後さらに作っていきたいものや、活動についてお教えください。 藤城 僕は大きなことは思っていない。僕の個性は、真に生きていることが答えだと思うから。人間は、自分が選んで、考えて生まれてきたわけじゃない。何のために生まれてきたのか。自然の中でどう素直に生きて、一時の喜びを感じているか。 だから作りたいものというのは、自然の風景や人、友達、先生、社会、光や影――。そういうものすべてを大事にして、自分とどういう風につながっているのか。それを考えていれば自然と見つかるんだと思う。けれど、ウクライナ侵攻や東日本大震災、能登半島地震など、戦争や災害のことは決して忘れてはならないと思っています。 僕はよく「自分の好きなことをしている」と言われるけど、「好きなことをしよう」と考えているわけじゃない。自然の中で自分の感覚や体にどんなものが合っているか。宇宙の中に、どうストレートに素朴に合っているかを考えている。 「無理をして目立ってやろう」とか、「自分に合ったものは何だろう」と考える必要はない。ごく自然に見つかる。だから、僕も何が好きかと言われるとわからない。自然にこういうのがいいなと出てくるんだ。 そういうと、「猫はお好きじゃないですか」と言われるんだけど、それも僕の方から犬や猫に積極的に働きかけるよりも、生きものの方からこちらにやってくることがほとんどなんだ。 今、家で飼っている猫のアビーも、家族で猫を観に行ったときに僕のところへ一直線に駆けてきた。僕は目立たないところに離れて座っていたけど、係の人がアビーを抱えたら、アビーがその人を飛び越えてね。それで僕の膝の上に座ると、僕のお腹をもみ始めたんだよ(笑)。 藤城清治(ふじしろ・せいじ) 1924年東京生まれ。1948年『暮しの手帖』で影絵の連載を開始。1956年には影絵劇『銀河鉄道の夜』にて、国際演劇参加読売児童演劇祭奨励賞、日本ユネスコ協会連盟賞受賞。1983年には絵本『銀河鉄道の夜』がチェコスロバキアの国際絵本原画展BIBの金のりんご賞受賞。2013年には藤城清治美術館那須高原をオープンするなど、精力的な活動を進めている。
ゆきどっぐ