80年前の津波で多くの犠牲者…南海トラフ地震に備え高齢化進む町で『高台移住計画』検討 抵抗ある人も
およそ5200平方メートルの施設には、9世帯が暮らせる居住スペースのほか、集会室や広場が併設されている。
大紀町では2023年10月、錦地区の後期高齢者およそ300人を対象にアンケートをしたところ、移転を希望する人が50.7%とわずかに過半数を超えた。 西村すやさん: 「そういう住宅なら安全地帯に建ててくれるんでしょ。それやったら逃げやんでいいでええわ。ありがたいな」
■「高台移住」に抵抗がある高齢者も 専門家は「若者にも促進を」
しかし、住み慣れた家を離れる事や、移転に伴う費用負担がかかることから、抵抗がある高齢者もいる。 錦地区に住む高齢の女性: 「私らもそうゆうとこよう住まん。どうしても住んだとこにおりたい。1人でおるで気楽やな今のところ。気にせんでええし」 錦地区に住む別の高齢の女性: 「(入居費用が)高かったら誰も行かへんやん。1人暮らしの人多いしさ、その人たちはやっぱし年金暮らしやろ。それで高かったら入れへん」
大紀町は、今暮らしている土地や住宅を町に提供してもらい、移住にかかる費用や移住先の家賃費用に充てるなど、住民の負担をなるべく抑える仕組みを検討するとしている。 大紀町の西村副町長: 「町全体(の移転)というところであれば、(国の)補助金要綱にメニューがあるんです。これだけの町ですので、それぞれが生活している中で、事前に全体を移転するっていうのは現実的じゃないのでですね。もちろん家があってですね、そういう方に移ってもらう予定ですので、費用は極力低くして、できるだけ利用してもらいやすい内容にしていきたいと思っています」
地域防災に詳しい専門家は、こうした取り組みを評価したうえで、災害発生前の移住を進めるには高齢者だけでなく、若い層にも促すべきと指摘する。 京都大学防災研究所の牧紀男教授: 「やっぱり歳をとってくると、新しい環境への適応が実際問題難しくなってくるので、移るのであれば若いうちの方がお金のことも自分で何とかできますし、生活を自分でそこで立ち上げることもできますし、地域の方としっかり議論することが求められると思います」
大紀町は2028年度に、単身高齢世帯を中心に8世帯の移転を目指して敷地の造成などを進め、2024年度中に基本構想を作り、住民に知ってもらう機会を設ける予定だ。 昭和東南海地震から80年。いつ起きてもおかしくないとされる巨大地震を前に、被害を少しでも抑えるための取り組みが求められている。 2024年12月6日放送