80年前の津波で多くの犠牲者…南海トラフ地震に備え高齢化進む町で『高台移住計画』検討 抵抗ある人も
住宅から近い高台には、およそ30カ所の避難所を整備した。避難所には投光器や毛布などが備蓄されている。
錦地区に1人で暮らす、90歳の西村すやさんも、昭和東南海地震で被災した。当時の経験から、食料などの備蓄品を詰めたリュックサックを常に自宅に備えている。
西村すやさん: 「怖いです、怖いですよ。津波は怖い」 Q.今だったらどこに逃げます? 「高いところ。ここ出たところ段々があるでしょ」 三重県の想定では、錦地区に南海トラフ巨大地震が発生すると、およそ8分後に津波が到達し、高さは最大で16メートルに達するとされている。 西村さんは、地震が発生したら自宅のすぐ裏にある高台へ避難するつもりだが、不安もある。 西村すやさん: 「足がちょっと悪いで。ここをよう上がるかなと思って」 錦地区の人口はおよそ1500人で、75歳以上の後期高齢者が3分の1を占める。避難タワーや高台を登るのは容易ではない。
大紀町の西村副町長: 「結構きついですね。周りにはシルバーカー使いながら歩行されている方とか、杖で歩いている方もたくさんおりますので。そういう方に有事の際にここまで駆け上ってというのはなかなか難しいと思いますね」
■町が計画する「高台移住」
津波の被害から高齢者を守るため、大紀町が乗り出したのが、「高台移住」の計画だ。 錦地区にある海抜20メートルほどの高台に、高齢者など災害弱者向けの集合集宅を建設し、地震が発生する前に高台に移住しようという計画だ。
約7000平方メートルの土地を造成し、町が避難の困難な高齢者に貸し出し、移住してもらうという。
大紀町の西村副町長: 「高齢者の生きがい活動をしてもらうための集会所的な施設、あと小公園とか、グラウンドゴルフ場とかですね、健康増進のための施設も合わせて併設する予定になっております」 大紀町の移転企画は、奈良県十津川村の「高森のいえ」をモデルにしている。2011年の紀伊半島豪雨を機に、高齢者などが暮らすための住宅施設を村が安全な場所に用意した。