アメリカの名門育成機関IMGアカデミーのブライアン・ナッシュディレクターが語る、日本人バスケットボール選手が成功するカギ(後編)
「1000本普通のシュートを打つより150~200本をゲームスピードで打つほうが効率的」
――限られた時間で成果を挙げるために、意識していることはありますか? 一つひとつの練習に意図と計画性を持って、効率的な練習メニューをこなすのが一番です。コーチたちは全てのことを一度にやろうとする習性があるので、効率的に選手たちに吸収させるために、自らの哲学に応じて練習を計画する必要があります。時折、それは個人のスキルアップの時間を犠牲にしかねませんが、最終的にはコーチの哲学に従順でなければなりませんし、選手も信じなければなりません。コーチは選手たちに何をしたいのかを明示し、互いの理解を深めなければなりません。 私たちのプログラムは、1年のうち9カ月間で、その間に3つのフェーズがあります。シーズン前、シーズン中、そしてシーズン後です。フェーズごとの内容は、次のフェーズに移る前に計画します。シーズン後の3カ月間は、故郷に帰ったり旅行したりというオフシーズンになりますが、その期間で個人のスキルアップのための練習メニューを考えてもらうようにしています。今後、コーチ陣が毎日一緒にいるとは限りませんから、私たちはこの3カ月を重要視しています。 ――日本の小中学生の中には、バスケットのスクールに通いながらパーソナルレッスンを受ける選手もいて、オーバーワークを危ぶむ声もあります。 IMGの選手たちに伝えているのは、練習は効率的であるべきだということです。2時間のトレーニングメニューがあるとしたら、普通にこなすだけではなく、45分間はゲームスピードでドリルをこなすことを意識してほしいです。例えば、シューティングマシーンを使って「今日は1000本シュートを打った」と得意げな選手がいたとして、それはおそらくゲームを意識したシュートではないでしょう。1000本普通のシュートを打つよりも、150~200本をゲームスピードで打つほうが効率的です。効率的な練習メニューは、身体への負荷を減らし、時間が作れるという点においても非常に良いことなのです。 ――貴重なお話をありがとうございました。最後に、読者の方にメッセージをお願いします。 大事なのは夢や目標を持つことです。スポーツキャリアには浮き沈みの波があります。沈んだ時にこそ、私たちは人間性を構成しなければなりません。多くの大人たちが子供たちを快適な環境で育てよう、子供たちが幸せに生きられる環境を与えようとしますが、実はこれは間違っています。 困難にぶつかり、乗り越えていかないと本物の幸せというものは手に入らないからです。そうして学ぶことが後に生きてくるのです。
山根崇