「年越しそば」自分で打つと「格別です」…定年退職後の趣味でも人気「人とのつながり生んでくれる」
「細く長く生きられますように」「厄を断ち切れますように」――。願いを込めて大みそかに食べる「年越しそば」は、博多発祥との言い伝えもある。自分で打って家族に振る舞ったり、地域の素材を味わったりと、楽しみ方も様々だ。(江口朋美) 【写真】八女茶を用いた茶そば
福岡県糸島市のそば屋「そば打ち楽土」で、夫婦が店主の光武修務さん(58)から手ほどきを受けていた。
あらかじめ水を含ませたそば粉を混ぜるところから始める。粉は、ソバの実を石臼でひいてふるいにかけ、香りが良くなるよう黒い殻付きの実も混ぜる。生地をまとめて丁寧に延ばし、切るところまで約1時間。その後、店内で打ちたてのそばをゆでてもらい、ざるそばで味わった。
初めて挑戦した同市の中野実佐緒さん(65)は「均等に延ばすのが難しかった。麺の幅で違う食感が楽しめるのもおもしろい」と笑顔。夫の広貴さん(64)は「もっと上手になって、今年の年越しは自分が打ったそばを家族に振る舞いたい」と張り切っていた。
光武さんは20年以上、趣味でのそば打ち経験があり、コロナ禍を機に早期退職して2022年秋に開業した。1人4500円(11歳以上)など。体験後の食事には、「そばの実雑炊」なども付く。
29~31日限定で「新そば 年越しそば打ち体験」も。そば打ちのみで一人4000円(4人前)。光武さんは「自分で打ったそばでの年越しは格別です」とほほ笑んだ。
生きがいにも
調理経験が少なくても始めやすく、家族や近所に喜ばれることから、定年退職後の趣味としても人気だ。
福岡市の公民館サークル・長そばの会(藤島敏彦会長)は、市内5か所の公民館でそば打ち教室を開いている。現在は、60歳代以上を中心に約70人が月1~2回、学んでいる。
名誉会長の岡本忠さん(91)が08年に発足させた。その日の温度や湿度でそば粉に加える水の量も体感で覚える必要があり、「職人的な要素が大きい奥深さに引きつけられる」そうだ。生きがいづくりにもつながっている。