<16カードここに注目 センバツ交流試合>吹くか「コバルトブルーの風」 強打の国士舘に磐城が挑む 第4日第2試合
2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)が8月10日から、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われる。15日の第2試合で対戦する磐城(福島)と国士舘(東京)の見どころや両チームの戦力、学校紹介、応援メッセージを紹介する。※全国大会出場回数は今春のセンバツを含む。 【福島屈指の進学校】躍進の原動力 磐城のエース・沖 ◇磐城は沖の復調次第 国士舘・中西はシンカーに注目 2018、19年と秋季東京大会を連覇した国士舘は投打ともに地力がある。磐城はエースの右腕・沖政宗を中心に粘り強く戦い、ロースコアの展開に持ち込めるか。 大黒柱の沖は19年秋の公式戦では最速140キロを超える直球や切れの良いスライダーを低めに集め、防御率0.90と抜群の安定感を誇った。センバツ交流試合に出場する32校の主戦投手では2番目に良い数字である。 ただし、沖は7月に入り調子を落としているといい、本来の投球を見せられるか。東京大会全6試合で2桁安打を放った国士舘は長打力のある黒沢孟朗(たろう)を中心に強打を誇る。永田昌弘監督は「『これが国士舘の野球だ』と下級生に伝えられる試合をしたい」と語る。 国士舘の長身右腕、切れのある変化球に定評のあるエースの中西健登の投球も注目される。特にスリークオーターから繰り出すシンカーが鍵になりそうだ。一般的に左打者の方がボールを見極めやすいとされるが、磐城の渡辺純監督は「シンカーは左打者から逃げていく形になる。かえって打ちにくい」と見ている。磐城はバントや積極的な走塁で好機を作り、右の強打者、主将の岩間涼星につなげたい。【岸本悠】 ◇感謝胸に恩返しの勝利を 磐城 福島の伝統校が甲子園へ戻ってくる。昨秋の台風19号、新型コロナウイルス、恩師との別れ……。多くの困難を乗り越えてきた選手は支えてくれた人たちへの感謝を胸に、恩返しの勝利を目指す。 1971年夏の甲子園で準優勝した時には、帽子やアンダーシャツの色から「コバルトブルー旋風」と注目を集めた。昨秋の東北大会では、台風19号の影響で学校のある福島県いわき市が大きな被害を受ける中、公立校で唯一8強入りし、地元に朗報を届けた。文武両道やボランティア活動に取り組むなど地域とともに歩む姿勢が評価され、21世紀枠で今春のセンバツ出場校に選出された。 「甲子園での勝利」を目標に掲げてきたチームをけん引するのは、エースの沖政宗(3年)と捕手で主将の岩間涼星(3年)のバッテリー。沖は最速140キロ超の直球と6種類の変化球を駆使し、打たせて取る投球が身上だ。昨秋の公式戦は10試合中9試合に登板。防御率0.90の安定感を誇る。岩間はチームトップの打率4割で勝負強さもあり、「つなぐ4番」を意識する。 新型コロナの影響で3月から臨時休校が続いた。3月末には、選手を支え続けてきた当時の阿部武彦校長、木村保監督、大場敬介部長が離任。渡辺純新監督は4月の初顔合わせの際、落ち込む選手たちに語りかけた。「3人を甲子園に連れていこう」。新たな目標に向け、一丸となって再出発した瞬間だった。 6月の練習再開後、選手の士気は高まっている。渡辺監督は「たくさんつらい思いをしてきたが、最後に最高の舞台を用意してもらった。高校野球をやっていて良かったと思えるよう全て出しきって終えてほしい」と期待をかける。【磯貝映奈】 ◇磐城・岩間涼星主将の話 日本全国、苦しい状況の中、たくさんの方が頑張っている。甲子園でプレーできることに感謝して多くの方々に笑顔や感動、勇気などを与えられるように頑張り、絶対に勝ちたいと思う。 ◇71年夏準優勝 復興けん引のリーダー育成も 1896年創立の福島県内屈指の進学校。男子校だったが、2001年から共学。現在は福島の復興をけん引するリーダーの育成に力を注ぐ。野球部は1906年創部。甲子園では71年夏に準優勝した。部活動が盛んで吹奏楽部は全国コンクール上位入賞の常連。OBに小野正一さん(元中日)ら。福島県いわき市。 ◇「伝統の結束力で『磐高野球』を」1974年センバツ出場時の監督・御代田(みよた)公男さん 福島県の独自大会が開幕した18日、昨年の台風19号で床上浸水した我が家のリフォームが終わり、約9カ月ぶりに戻ってきました。 台風の後は新型コロナウイルスの感染拡大。試練ばかりが立ちはだかるつらい日々だったと思います。自宅を修復してくれた業者は、偶然にも磐高OBでした。県内で新型コロナウイルスの感染者が急増した際は、野球部OBがマスクや消毒液をたくさん届けてくれました。磐高の絆の深さを実感した瞬間でした。 甲子園では、伝統の結束力を武器に「これぞ磐高の野球」という堂々としたプレーをしてきてください。そしてコバルトブルーのユニホームに誇りを持ち、各自の力を十分に発揮してきてください。 ◇秋の東京連覇の国士舘 19年センバツ経験者も 約240チームがしのぎを削った2019年の秋季東京大会で連覇を果たした。センバツでチームを2度の4強入りへ導いた実績のある永田昌弘監督は「全国でベスト8に入る力がある」と評する。 投手陣の大黒柱は長身右腕の中西健登(3年)だ。19年秋の公式戦では9試合のうち8試合に登板。2種類のシンカーを軸に多彩な変化球を駆使して的を絞らせなかった。完封四つを含む6試合で完投し、防御率は1.31。勝ち進むにつれて調子を上げ、「予想以上の成長ぶり」と永田監督をうならせた。 攻撃では、どこからでも得点を生み出す切れ目ない打線が持ち味で、好機を着実に生かす勝負強さもある。19年春のセンバツで下級生ながらレギュラーをつかんだ主将の鎌田州真(しゅうま、3年)、主砲の黒沢孟朗(3年)が打線の中心。ここ一番に強い清水武蔵(2年)ら下級生にも好打者がそろっている。 新型コロナウイルスの影響で3月中旬からチーム全体での練習を中断していたが、6月から段階的に再開した。センバツ交流試合の開催が決まると、選手たちは一度は諦めた夢舞台に「幸せです」と顔をほころばせた。 7月初旬に再び全体練習を中断するなど、首都・東京に拠点を置くチームを取り巻く状況は予断を許さない。それだけに、選手たちはかみしめるように日々の練習に全力を尽くし、意欲をみなぎらせる。 「今年は甲子園に続く道すら断たれ、聖地の土を踏めるチームは本当に一握り。出場校として恥ずかしくないよう、レベルが高い野球を見せたい」と鎌田主将。近隣のチームとの対外試合を重ね、実戦感覚を取り戻して本番に臨む。【川村咲平】 ◇国士舘・鎌田州真主将の話 (磐城は)投手力が高いチーム。(チームは)段々と雰囲気よく練習できるようになってきた。今年は甲子園でプレーできるチームが少ない。自分たちが堂々とプレーできればいい。 ◇斉藤仁さんら柔道五輪金メダリストを輩出 1923年創立。94年に男女共学となった。野球部は46年創部。モットーは「目先ではない真(まこと)の心づくり」。センバツは初出場した91年と93年に4強入りした。柔道部も強豪で、OBに五輪金メダリストの斉藤仁さん(故人)、鈴木桂治さん、石井慧さんら。東京都世田谷区。 ◇「全力で1試合を楽しんで」豪徳寺商店街振興組合理事長・斉藤充弘さん 野球部に限らず、国士舘の生徒は地域のお祭りがあると快く手を貸してくれて、とても素直で明るいです。そのため今春のセンバツは、私たちの商店街から応援を盛り上げようと準備していました。中止は残念でしたが、それだけに、センバツ交流試合が今から楽しみでなりません。 私もかつては野球少年でした。今でも地元の草野球チームに所属し、選手としてプレーしています。いくつになっても、白球を追いかけるのは最高です。 どうか選手たちには、改めて野球の楽しさを感じてもらえればと思います。練習不足でしょうからけがには気をつけて。全力で甲子園の1試合を楽しみ、そしていい思い出を作ってください。応援しています。