道上と清家の長い対峙(たいじ)シーンは圧巻――「笑うマトリョーシカ」最終回直前Pコメント
――橋本さんが本作で伝えたかったメッセージはどんなことでしょうか。 「この作品の企画者である監督の岩田がこのドラマに込めたテーマは『人の内面は外から見ただけでは分からない』ということ。人は一面だけでは捉えられないというのが大きなテーマであり、描きたかったことです。母親から特殊な育てられ方をした清家が“理想の人物を演じる”という特殊能力がある故に、人に所有欲をかき立てさせ、最終的に国民の人気を得て権力を手にしてしまう。でも本当の彼はどんな人間なのか。彼の核にあるのは果たしてどんな顔なのか。原作にも描かれている重要なテーマですが、ドラマ版ではさらに、清家を見続けてきた道上だからこその終わり方をするので、原作と合わせてぜひお楽しみください。もう一つ、原作にはいろいろな親子が出てきます。清家と浩子、浩子とその母、鈴木と父、亜里沙と母。原作を読んで、それぞれが親からの“宿命”を背負っていると感じました。それを背負った上で、子たちがどんな生き方をしていくのか。その“親子”という部分をドラマ版ではさらに掘り下げたいと思い、道上の父、母、そして息子がいる設定を、早見先生に確認の上、加えさせていただきました。道上にはBG株事件をスクープした元新聞記者である父がいて、そして物語の冒頭で父が衝撃的な事故死を遂げるという宿命を背負わせました。その道上が、父の死、過去の汚職事件、そして清家一郎とどう対峙していくのか、母の復讐(ふくしゅう)心を背負った浩子と、息子・一郎という全ての始まりである歪な親子の関係性と、道上の父から道上へ、そして息子へと代々伝わっていく思いを対照的に描くことで、道上だからこその浩子や清家との向き合い方、家族との向き合い方をドラマ版では肉付けできたらと思いました。また、道上に息子がいる設定を加えたことで、私個人的には“仕事を持つ親”という側面も掘り下げたいと思うようになりました。使命を持って第一線で働きながら子どもを育てる親の葛藤、悩み、家族との向き合い方、両方を完璧にできるわけないし、失敗もあるし正解はないですが、諦めずに全力で日々仕事のために子どものために奮闘している姿、ということも、このドラマのひとつの要素として描けたらと思いました。この作品の本筋はもちろん政治サスペンスですが、ドラマ版は“ヒューマン”要素も色濃くした上で、さまざまなキャラクターが登場し、視聴者の皆さんにも誰かしらに自分のことを投影し、家族について思うきっかけになれたらいいなと思います。また、堅いことはあまり言いたくないのですが、裏の裏のテーマとして、見てくださった方々が選挙に行きたくなるといいね、と監督や作家陣と話していました(笑)」