道上と清家の長い対峙(たいじ)シーンは圧巻――「笑うマトリョーシカ」最終回直前Pコメント
――清家役の櫻井さんについてはいかがでしょうか。 「清家は政策の説明や会見で話すシーンが多いので、セリフの量もかなり多いんですよね。清家は難しい役どころだったと思いますが、演じる上でたたずまいからしゃべり方、表情の一つ一つまで、ものすごく緻密に作りあげてくださったと思います。会見の場にたたずむ櫻井さんはまさに“清家一郎”だなと。櫻井さんのレギュラー番組のスタッフさんもドラマを見てくださっているそうで『政治家役が似合う』とよく言われているらしいです」
――第6話のラストで清家が鈴木を切り捨てるシーンは、櫻井さんが表現する清家の冷徹さ、そして鈴木が絶望する姿が視聴者に大きなインパクトを与えたかと思います。 「中盤の見せ場だったので、演じる側も相当プレッシャーを感じていたと思います。何が清家の“本心”の言葉で、何が浩子に“言わされている”言葉なのか分からない不気味さと、鈴木を切ることのつらさがひしひしと入り混じる、いろいろな意味を持つシーンだったので。鈴木が一生懸命清家に語りかけようとするのに、全く聞く耳を持たずにセリフをかぶせる清家のタイミングなど、監督、玉山さん、櫻井さんでディスカッションして作り上げていきました。いろいろな感情、要素が絡み合う難しいシーンでもありましたが、見事に演じきってくださり、名シーンの一つになりました。何度でも繰り返し見たくなります(笑)」 ――ここまでの作品作りで大変だったこと、苦労された部分はどんなところですか。 「脚本作りにおいては、原作にある回想シーンをドラマのどのタイミングで入れるかに一番苦労しました。“BG株事件”などドラマ独自の要素を足した分、原作の本線とつじつまが合っているかを考えながら組み立てるのが難しくて。あとはハヌッセンが誰なのかをどう見せていくかという点。鈴木から美和子、美和子から浩子へ疑惑が移行していくところは、映像だからこそより怪しく見せられる部分で、そこが面白くもあり苦労した部分です。早見先生にも毎回原稿をお送りし、気になるところがないかを都度ご確認いただきました。清家が“首相公選制”という国民が直接投票で首相を選べる制度を導入しようとするところも原作にはなく、事前にご相談した上で取り入れさせていただいた要素。あれは政治監修の方のアイデア。清家が最終的に権力を握っていく様子をより恐ろしく感じさせるためにどのような政策を打ち出すべきか相談した際、独裁的になる危険性をはらんだ政策として、この制度を教えていただいたんです。調べたところ、過去に何度か実際に議論されたことがあり、たとえば平成14年の懇談会の資料を読むなどをしました。これはドラマにおいても説明しやすいかつイメージしやすいのではないかと思います」