EVでデッドヒート、フォーミュラEが示す自動車レースの未来
こうした新規参入のファンはまた、まったく新しいモータースポーツの楽しみ方を受け入れている。従来のF1では国内の主戦場である鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)のように郊外の広大な敷地に建設されるレース場で開催されることが多かったが、フォーミュラEのレースは会場は都市の便利な場所にあり、観戦料も概して安くなる傾向がある。アクセスには電車など公共交通機関を使うのが普通で東京E-Prixも江東区の東京ビッグサイト周辺で開催された。
焼けたタイヤの山
F1は30年までにCO2排出を実質的にゼロとすることを目指しており、来年からゼロエミッション技術の導入を予定している。F1では、レースそのものがCO2総排出量に占める割合は実はごくわずかで、ほとんどは航空機などを使った移動によるものだ。レースそのものは非常に大規模で、レース終了後には焼け焦げたタイヤの山が残されていることも多い。
フォーミュラEではそうした車両以外の部分でのCO2排出削減も進めており、チームの人員を25人に制限し、レースで使用できるタイヤは2セットのみだ。ドッズ氏はフォーミュラEのミッションについて、「EVへの移行を加速させることであり、気候変動の重要性に関する世界的な教育を加速させることでもある」と語る。
一方、F1も16日に公表した最新のサステナビリティーレポートで、移動で持ち運ぶ設備や人員の規模も縮小する方針を明らかにするなどの対応を取っている。
環境に配慮するといっても、必ずしもスピードを犠牲にする必要もない。400キロワットのバッテリーを搭載したフォーミュラEの車両は現在でも最高で時速350キロメートル近くに達する。今シーズンの後半には効率を改善し、馬力を約2倍にした次世代マシンが発表される予定だ。
さまざまな気象条件のサーキットでさまざまな技術が搭載された車を猛烈なスピードで走らせることで、大手メーカーはサーキットで学んだことを公道用のEVの改良に生かすことができるし、EVの改良でレースを優位に立つこともできる。これはF1の場合と変わらないモータースポーツの利点だ。