電車内でも日本酒を飲めるように...「ワンカップ大関」が生んだ容器革命
「パック酒は美味しくない」は本当か
紙パックの容器に入った通称「パック酒」は、手ごろな価格帯で、気軽に購入できるお酒です。 このパック酒に「美味しくなさそう」というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、その理由として料理酒と混同されている影響があるかもしれません。 なお、一般的に料理酒として販売されているものは、アルコール度数は3%程度を上限として塩分が添加されています。用途はあくまで調味料であり、飲むことを目的としていないため、お酒には分類されず、酒税がかからないのでその分安価に販売されているのです。 飲用を目的としたパック酒もあります。紙パックは瓶よりも資材費が安く、大量生産ができて重量も軽いので、輸送費は安価で済み、結果的に手ごろな価格で販売されています。 パック酒は保存という点でも優れています。日本酒の劣化に対して、もっとも影響があるのが日光です。紫外線は、日本酒の味を変えてしまう、業界用語で「日光臭」と呼ばれる特有の香りを作り出します。 パック酒の包装パックは光を遮断する作りをしているので、紫外線の影響を受けにくくなります。そのため、パック酒はフレッシュな美味しさを長くキープできます。
パック酒の革命児「ギンパック」
パック酒の中でもインパクトを与えたのが「菊正宗 しぼりたてギンパック」です。「いつもの食卓をもっと上質に」というコンセプトを軸に、2016年9月にデビューして以降、従来のパック酒とは一線を画す高い香りが特長です。封を開けた瞬間にふわっとメロンのような香りが舞い上がってきます。 毎年ロンドンで行われる、世界最大規模のワイン品評会「IWC」のSAKE部門において、高品質でもっとも優れたコストパフォーマンスの1銘柄のみに与えられる「グレートバリュー・チャンピオン・サケ」を2019年、2023年と2度も受賞したことがあるほど、実力を兼ね備えたお酒です。価格は1.8Lで約1600円以下であり、その味わいを踏まえると驚きの価格帯です。
地元ならではのパック酒たち
山口県岩国市の五橋(酒井酒造)の紙パックは、瓶で販売されている純米酒や純米吟醸などと遜色がないほど美味しく、長野の北安曇郡の大雪渓は「山の酒」の名の通り、登山やキャンプ、山小屋などでも楽しめる日本酒です。口にすれば、地元の方に長年愛されたことがわかる、気取らないホッとした飲み口が特徴です。 五橋、大雪渓、ギンパックのいずれの紙パックも、スーパーや酒屋さんで購入でき、最近ではAmazonでも購入可能になりました。興味のある方は、ぜひ一度試していただき、紙パックの魅力を味わってみてください。
髙橋理人(酒蔵コーディネーター)