街から消える本屋 惜しまれつつ、青山ブックセンター六本木店が25日に閉店
6月25日最終日を数日後に控えた6月21日夜、六本木店の店内で人形劇が開催された。能楽師の安田登さんがかねてからシュメール語と能楽を組み合わせて公演してきた人形劇『イナンナの冥界下り』だ。店舗の広さからこれまであまりイベントなどは行ってこなかった六本木店だったが、閉店を前に、安田さんからの申し出で実現した。 夜の帳が下りる頃、六本木の書店で繰り広げられた幻想的な人形劇。これもまた、青山ブックセンター六本木店への愛情表現のひとつだった。 (取材・文・撮影:平松温子)
<青山ブックセンター六本木店の沿革>
1980年広告代理店の株式会社ボードが、書店1号店として出店。1984年には広尾店、1992年には新宿店をオープン。全盛期には東京、神奈川に7店舗を有するチェーン展開をしたが、1991年に突如始まったバブルの崩壊による不況のあおりが直撃。加えて、競争激化に対抗すべく店舗拡張をはかるも財務状況は厳しさを増していった。2004年に取次会社の破産により、突然、全店舗が閉店。2カ月後にはグループ会社によって民事再生の申し立て後に再建。地方への新規出店などで一度は盛り返しを見せた。 ところが、2008年に当時の親会社・日本洋書販売が破産。再び民事再生法による再生手続きが取られることになった。救済の名乗りを上げたのが、新古書チェーンのBOOK OFFだった。一部店舗は他店に譲渡されたり、看板の付け替えをおこなったが、青山ブックセンターの名を残す店舗は青山の本店と六本木店の2店のみとなった。 それから10年。今回、1号店の六本木店はついに完全閉店、青山本店と統合する運びとなっている。他にない個性的な書店、名店と謳われた六本木店の閉店は、出版業界全体の低迷と、インターネット書店の隆盛という店舗型書店苦難の時代の荒波から身を守るための、苦渋の決断だったことだろう。