街から消える本屋 惜しまれつつ、青山ブックセンター六本木店が25日に閉店
六本木ヒルズができるずっと前から、界隈のランドマークとして親しまれた青山ブックセンター六本木店。2018年6月25日、この老舗書店が38年の歴史に幕を閉じる。 青山ブックセンター六本木店がこの地に開店したのは、1980年。広告代理店の株式会社ボードが、書店1号店として出店したのが始まりだ。広告代理店が運営する店とあって、一般新刊書に加えて写真やデザイン、建築、美術関連など、アートやサブカルチャーのニーズに応えた書籍が充実していることで知られていた。
ほかにないラインナップでサブカル文化を下支え
閉店を間近に控えた青山ブックセンター六本木店に別れを告げるべく、あらためて訪れてみることにした。 東京メトロ・日比谷線六本木駅を出てすぐ、六本木通りに面した店舗は、これまでと変わらず、多くの来店者を迎えて賑わっていた。店の入り口には「検索でたどりつかない、本とアイデアを。」の立て看板。この店にぴったりのキャッチフレーズだ。 店に入ってすぐ目につくところには、新刊ながらもほかの書店では最前面に飾られることのないアート系の書籍が並べられている。 絵本や文学、デザイン、建築などの棚を見ながら奥へ進むと、この店の顔ともいえる写真集や美術のコーナーがある。誰かマニアックな趣味人の書斎の中に迷い込んだよう。最近ではあまり作られなくなった、片手では持てないような大判の豪華写真集や、ここで出会うまで名も知らなかった海外の美術館のコレクション本などが、手に取ってくれる人を静かに待っている。 閉店を前に、今は一部商品、特に他書店にはないようなラインナップの多くが70%オフになっている。本店との統合を前に、在庫処分をする形なのだろうが、この書店での最後の出会いを求めて貴重な写真集などを手に取る客が多い。 一般の書店に比べて、棚差しされた書籍より、表紙を見せた陳列が多いように見える。表紙そのものがデザイン性に富んでいたりして、見栄えがするためもあるだろうが、それだけの理由ではなさそうだ。どの書籍も同じくらい愛おしい、どの書籍もできるだけ人の目に触れてもらいたい、出会うべき人ときちんと出会わせてあげたい。そんな思いが伝わってくる。 慌ただしい六本木の通りにありながら、ここでは時間がゆったり流れている。本が好きな人、特別な本と出会いたい人が、じっくりと書籍に埋もれて時を過ごすからだ。写真集をいくつもいくつも取り出しては眺めている人、文学を読みふける人、真剣な表情で美術のデッサン書とにらめっこする人……。 目的をもってここに来る人も、吸い込まれるようにここにたどり着いた人も、ここに来るとみな、この空間をどう楽しむか最初からわかっていたかのように振舞うのだから不思議だ。