「年金を繰下げしすぎたら損をするって聞いたのですがホントですか?」損益分岐点だけで判断しない方がいい理由を解説
繰下げ受給の注意点
最後に繰下げ受給の注意点をお伝えします。 ●税金や社会保険料の負担が増える 繰下げによる増額によって、税金や社会保険料の負担が増える場合があります。 年金が少ないと軽減措置があるため手取りはあまり減りませんが、年金が増えると新たに所得税や住民税の負担が発生するなど、手取りが減って、思ったほど増額を感じない場合があります。 ●加給年金の加算がなくなる 加給年金は、65歳未満の配偶者や18歳未満の子の生計を維持している老齢厚生年金受給者に加算される年金です。 年金を繰下げている期間は支給されません。 また、繰下げ期間中に配偶者が65歳に到達すると加給年金の受給権利がなくなります。 ●医療費の負担が増える場合がある 繰下げ受給をして、年金が増額されると、健康保険や介護保険を利用する時の所得区分が変わり、自己負担割合が増える可能性があります。 所得の判定は、公的年金だけでなく、企業年金や個人年金などの年金収入、不動産収入など他の所得も含むので、所得の多い人は繰下げ受給の増額によって自己負担割合が増えてしまわないように気を付けましょう。
まとめにかえて
繰下げ受給によって、年金額が増えることはメリットですが、それに伴うデメリットもしっかり把握しておきましょう。 また、繰下げ受給は一度選択すると取り消すことはできません。 損得よりも自身の生活の安定を第一にして、繰下げ受給の開始時期を決めるといいでしょう。
参考資料
・厚生労働省「令和6年財政検証の基本的枠組み、オプション試算(案)について」 ・日本年金機構「年金の繰下げ受給」 ・厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」
石倉 博子