免税悪用しトンズラ…爆買いインバウンドに制度の“穴”、リファンド方式で消費税取りっぱぐれ防げるか
■ かつてアップルジャパンに140億円追徴課税 消費税の免税制度はプラス面ばかりではありません。制度を悪用する外国人客も目立ち、転売目的にもかかわらず、消費税を逃れるケースが続出しているのです。 最近の例で広く知られたのは、iPhoneなどを販売する米アップルの日本法人アップルジャパンをめぐるケースでしょう。2021年9月期までの2年間で、合計約140億円もの消費税を同社が追徴課税されたのです。 アップルの直営店では中国人客らがiPhoneなどの免税購入を繰り返していました。免税が適用されるのは、観光客らが土産物などとして日本国外に持ち出す場合に限られています。 消費税は日本国内での消費に対する課税であり、国外で消費する場合には課税しないという原則があるためです。しかし、密かに国内で販売したり、転売目的で外国に持ち出したりする場合には、免税取引が認められていません。 それにもかかわらず、東京国税局が税務調査したところ、日本国内のアップル直営店では、明らかに転売が疑われる販売が相次いで行われていたとされ、販売総額約1400億円分について免税要件を満たしていないと指摘されたのです。当時の報道によれば、免税販売を巡る消費税の追徴額としては過去最大規模でした。 東京国税局の調査では、1人で数百台ものiPhoneを免税で購入するケースもあったとされています。iPhoneは日本国内での販売価格が海外と比べて割安であり、転売業者は訪日客に報酬を与えて免税購入させ、商品を海外で転売して利益を得ていたとされています。 化粧品やブランドものの革製品を免税で購入して日本国内で転売し、消費税分のサヤを稼ぐ手法も横行しているようです。
■ 9人で3億4000億円の消費税を取り逃がす 訪日客は出国の際、免税購入品の検査を受け、物品が確認できない場合は消費税の納付を求められます。ところが、会計検査院の検査によると、2022~2023年度に羽田・成田両空港では、1億円以上も日本国内で免税品を購入しながら物品の持ち出しが確認できず、かつ、納付が行われていなかった人が9人もいたことが発覚しました。 9人の購入総額は約34億円。これらについては、税関職員が課税手続きをしなかったため、結局、3億4000万円もの消費税を取り逃した結果になったのです。 この9人については、免税購入した物品を日本国内で転売業者らに販売し、手数料収入を得た疑いが持たれています。これに限らず、両空港では、出国の際に免税品を所持していなかったことから、訪日客に消費税を課したケースは2022年度だけで367件に達しました。 海外では不正転売を防ぐため、市中での免税販売は行わず、出国時に商品の持ち出しを確認してから税額を払い戻す「リファンド方式」を採用している国が多数ありますが、日本ではこの方式を採用していません。 その隙間を狙われたとも言えそうです。日本総研の試算によると、こうした消費税の不正は2022年度で1000件近くに上り、その追徴課税は総額150億円規模に達しました。