大量閉店「ヴィレヴァン」経営が犯した最大の失敗 山ほどある判断ミス、一番まずかったのはこれだ!
ヴィレヴァンにおいては、そこで売っているものよりも、「そこに何かを買いに行く」という行動が、顧客にとっての一つの魅力になっているといえるのだ。 ■「センスを売る」ことの難しさ しかし、この「センス」がベネフィット、というのは、実は諸刃の剣である。 というのも、「センス」自体、言語化しづらいし、それを伝えていくことが難しいからだ。 菊地は「センス」について次のように述べている。 本屋のセンスは、この本の隣になにを置くかで決まる(永江朗『菊地君の本屋』、p.112)
ある本を売るとして、その隣に何を置き、どのようにしてその本を演出していくか。その能力こそがセンスだというのだ。しかし、では実際にどんなものを置けばいいのか、それはなかなか言語化が難しいし、実際菊地の本を読んでいても、「わかるようで、わからない……」というのが正直なところでもある。とてつもなく継承するのが難しい能力なのだ。 初期のヴィレヴァンはそれでもよかっただろう。初期のヴィレヴァンで働いていた正社員について菊地は「ヴィレッジヴァンガードが好きで来てくれていたので一番大事な『センス』をある程度持ち合わせてくれているので助かる」と書いている。ヴィレヴァン好きがそこに集まり、しかも人数も少なければそれだけ菊地の言う「センス」を肌で感じることができたのだ。
しかし、ヴィレ全さんのインタビューで述べられていた通り、近年では社員教育がなかなかうまく進まないこともあって、この「本の隣に何を置くか」という「センス能力」が著しく低下してしまった。 そして、それに拍車をかけたのが、ヴィレヴァンの多店舗化だ。ショッピングモールを中心として出店が進んでいくなか、菊地が当初言っていたような意味での「センス」がなかなか理解されなくなっていく。 しかも、店舗が増えれば「他の人とちょっと違うことをする」感じがなくなってしまう。ありとあらゆる面で、ヴィレヴァンはベネフィットを失っていったのである。