「パクられても5年で済むと…」ルフィ事件で残忍な犯行を重ねた実行役…犯行はなぜエスカレートしていったのか
●「殴ったり蹴ったりしないと報酬はあげません」
犯罪という世界において一目置く「キム」と“案件”を繰り返すなか、被告人は次第に、他の実行犯からも“ヘッド”などと呼ばれるようになる。2件目に起こした東京都中野区の強盗では、家に押し入る直前に「キム」は永田被告人と繋いでいたテレグラム通話をスピーカーモードにするよう求め、他の実行犯らに向け、車内でこう呼びかけた。 〈殴ったり蹴ったりしないと報酬はあげません。家には3000万円あります。現場ではカルパスくんの指示に従って、女子供は口を塞いで黙らせてください。チャチャッとやっちゃって大丈夫です〉 “カルパス”とは被告人のテレグラムアカウント名である。「キム」は多くの案件でこのように突入前、実行犯らにスピーカーフォンで発破をかけるのだが、このときはそれだけでなく実行犯に向けて“永田被告人がリーダーである”と示したことから、「ルフィ」の案件において被告人は一目置かれた存在となったようだ。 以降、実行犯リーダーとして、現場では指示を出すこともあった。加えて、紹介される“案件”について、永田被告人から「キム」に対し、提案を申し出るようにもなった。 実際、この中野の事件において、家人の制圧に時間がかかったことから“次の案件ではモンキーレンチを用意して欲しい”と「キム」に伝えている。こうしてモンキーレンチを携えて広島市内の強盗に及び、家に住んでいた49歳男性の頭を殴り、大怪我を負わせた。 このときも突入前に「キム」はスピーカーフォンで実行犯らにこう告げていた。 〈殴ったり蹴ったりしないと報酬はあげません。カルパスくんがモンキーレンチでじゃんじゃんやってくれますので、皆もどんどんやってください。ただし、殺しちゃいけませんよ〉
●「強盗したら5年で済むという感覚になりました」
広島市の事件において、被告人は家人に大怪我を負わせたことを認識したが、それでも強盗をやめずに続けたのは「自暴自棄になっていた」からだという。 「中野の事件では証拠を残しており、私は必ずパクられると思った。ですが強盗で逮捕されて何年刑務所に入るか知識がなく、強盗の法定刑が5年以上だったと見たので、5年だと思い込み、強盗したら5年で済むという感覚になりました。パクられても5年。一般人の方に暴力を加えることは自分の主義に反するが、もういいわと自暴自棄になり参加しました。加えて競艇に注ぎ込む金も欲しかった」 この頃、競艇にのめり込み続けていた被告人は「キムさんも格上だと言いましたが、この人もかなりの格上です」と悪の道で一目置くというヤミ金業者から金を借りていた。 広島市の事件で大怪我を負わせたが、振り返ることなく“案件”に集中してゆく。 返済のためという目的のほか「どうせパクられると分かってるなか、加えて広島で意識不明になるとんでもない怪我を負わせてしまった。どうせパクられる。ガラ(身柄)を隠そうと思いました」と、自分自身が「キム」らのように指示役として身柄を隠しながら悪事を続けよう……と考え始めていたという。 そして、その手口はより残忍なものになっていった。