「パクられても5年で済むと…」ルフィ事件で残忍な犯行を重ねた実行役…犯行はなぜエスカレートしていったのか
●「ルフィ」らを指示役とする広域強盗6件に関与
続いて開かれたのが、この永田被告人の裁判員裁判である。 永田被告人は「ルフィ」らを指示役とする広域強盗6件に関わり、狛江事件を起こした翌日に逮捕された。検察官は公判で永田被告人を「実行役リーダー」であったと述べているとおり、指示役「キム」と密接に連絡を取り合いながら、時に強盗をスムーズに実行するための提案なども行い、現場では実行犯らを統率することもあった。 狛江の事件においては被害女性をバールで殴ったひとりだとされており、また広島県広島市の強盗事件においては、モンキーレンチで家人の頭部を殴り、高次脳機能障害という深刻な結果をもたらした。逮捕後の移送の様子をとらえたテレビ映像には、笑みを浮かべて中指を立てる永田被告人が映っている。 ところが公判にも同様の態度で臨むのかと思いきや、まるで違っていた。弁護人は初公判冒頭陳述でこう述べている。 「被告人自身、自分のしたことが取り返しのつかないことであると自覚しており、厳しい処罰が下されるべきだと思っています。被告人はありのままを正直に話していきます。それが責務だと思っているからです。量刑のことを考えているわけではありません。すすんで話したくないような悪い行動や振る舞いが語られることがありますが、それは被告人が、正直に話すのが責務だと考えてのことです」
●指示役への憧れ、事件は「自分の意思でやってます」
公判ではたしかに被告人自身から、事件についてのありのままが正直に語られた。そこからは被告人が抵抗感なく「闇バイト」募集から強盗に手を染め、また途中からは指示役のような生き方を目指そうとしていたことがわかった。 被告人は事件取材、石川県内で土木関係の仕事をしていたが、競艇にのめりこみ、消費者金融だけでなくヤミ金からも借金を重ねた。この返済と、競艇のための元手を得るため、2022年11月上旬にTwitter(現X)にて「闇バイト」募集に応募。フィリピンのビクータン収容所にいた「ルフィ」ら指示役とつながる。 最初の“案件”は空き巣だったが「中学一年の頃から犯罪歴が多い。常習的にやっていたこともあり、一般人と違い、抵抗はあまりなかったです」と振り返る。 被告人が密に連絡を取る指示役は「キム」。被告人は一件目の“案件”を綿密に打ち合わせる中で「キム」に対して尊敬の念を抱いた。 「犯罪において私は一般の人と違う考えを持っています。いかつい人が怖いと思うかもしれませんが、私は、底知れないとか、自分よりも犯歴がある人を怖いと思う。キムさんはとても頭がいい。私も犯罪歴がありましたので、かなり知識はあるほうでしたが、キムさんはそれを遥かに上回り、口調や説得力が上回っていたので、格上だと思いました」 しかし格上だとは思っていたが「キム」への恐怖から犯行に手を染めたわけではないとも付け加えた。 「怖いからやったわけではありません。怖くて逆らえなかったということもありません。自分の意思でやってます」