コツをマスターして叱り上手な上司になる! 守るべきは「3つのルール」
新年度も始まり、上司や先輩となったビジネスパーソンの悩みが正しい「叱り方」がわからないということ。指導・教育をするうえで避けて通れない悩みに、組織活性化コンサルタント・神岡真司氏がお答えします。上手な「叱り方」のコツをマスターして、部下のモチベーションや作業効率を上げましょう。 【イメージ写真】パワハラにならない上手な叱り方のコツ ※本記事は、神岡真司:著『人生を1時間でチート化する 対人スキル20』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。 ◇叱ることで部下を成長させられていますか? 近頃では、部下を叱責すべきときに「下手すりゃパワハラ呼ばわりされかねないから注意できないよ」などと嘆く上司がいますが、考え違いも甚だしいのです。 これは管理者である上司の責任逃れの言い訳であり、愚痴にすぎないでしょう。相手のよいところを評価して「ほめること」が、「お世辞」や「オベンチャラ」「ゴマスリ」などと違うように、「叱ること」は、「怒りをぶつけること」でもなければ「罵倒すること」とも異なります。 いわんや、ストレス解消のはけ口でもありません。職場の上司は、職場の規範を守り、生産性を向上させる責務を負っています。部下のミスやしくじり、怠慢といった行為を黙って見過ごすわけにはいかないのです。 ゆえに上司は、部下の失敗の原因を辿り、次にミスがないよう指導・督励する必要があるのです。その結果として、部下がやる気をもってチャレンジしてくれるようにすることが求められるのです。つまり、叱ることで部下を成長させるのです。 ところで、「叱ること」は、「ほめること」よりも難しいものです。叱っているつもりが、怒っている状況になりやすいからです。感情的になると、「叱る」ではなく「怒る」になってしまいます。 これでは相手の共感を得られず、反感を募らせかねません。まずは、叱るときの「3つのルール」を心得ておきましょう。 ・虎の威を借りない 「社長がこういうのは駄目だと言ってるだろ?」 「私でよかったな、部長が知ったら大変だったぞ」 ・性格や能力に言及しない 「きみの性格が暗いから、こうなったんだよ」 「どこの大学を出たんだ? こりゃ中学生レベルだ」 ・過去の失敗を持ち出す 「あのときの失敗もそうだったよな、どういうことだ」 「何回、オレの顔に泥を塗れば気がすむんだよ」 1.は無責任な上司です。上司としてのプライドもメンツもあったものではありません。2.は部下の人格を踏みにじっているだけです。3は卑怯なエンドレス攻撃です。ネチネチと部下をいたぶるのが習性のようです。 こんな事例は、タチの悪い上司が部下に「怒り」をぶつけているだけで、ミスや失敗を指摘される部下のほうも、内心では上司への恨みを蓄積するだけでしょう。叱る目的は、部下の行動を改善させ、その成長を督励することでなければいけません。 ◇自分の指示の出し方が悪かったのかも…は大事 正攻法で部下を叱るには、上司も確たる信念をもって、仕事に取り組んでいなければなりません。口先だけ偉そうに、上から目線で部下を叱責しても、部下が内心で「お前だって、いつも怠慢だろうが……」などと思われていたら、意味がないからです。 上司として、自らも「規範」を守り、日常的に、正々堂々と前向きに仕事に取り組んでいなければならないのです。叱る人の責任ある行動があるからこそ、部下を叱ることもできるのです。 叱るときに大事なのは、タイミングです。基本的には、「常識」や「マナー」に反する行為は、その場で指摘して改善を促さなければいけません。 ・不可抗力であっても、少しでも遅れるときには、前もって連絡を入れなさい ・きみの電話でのやり取りだけど、敬語の使い方を間違っていたよ。正しくは〇〇だよ ・さっきの接客時のきみのうなずき方だけど、あれでは不躾けでお客さまに対して失礼だよ こんな具合に、具体的なポイントを短く指摘して、たしなめることが重要です。また、ミスの原因が根源的なところの場合には、時間と場所を変えて行いましょう。 ついうっかりのミスと、怠慢によるミスは違います。ただし、ここで叱責する場合には、もう一度、上司である自分の指示の出し方が悪かったのではないかという「振り返り」もしてみるべきです。 どこかで部下に勘違いを生じさせたのでは? と責任の一端が自分にもあるかもしれないといった謙虚な気持ちで、部下と向き合うべきだからです。 単純なケアレスミスは、その場で原因を指摘して改善を図るべきですが、ここでもケアレスミスが何度も続くと上司は苛立ちを覚えます。しかし、「またかよ、お前、バカじゃないのか?」「なんべんやりゃあ、気がすむんだよ!」などと言う罵声は禁句です。 深呼吸して、「ミスしない方法を考えて報告してくれないか?」と問うべきです。怠慢による部下のミスの場合は、上司も頭に血が上りがちです。そんなときは、自分の頭を冷やす意味でも、「きみ、ちょっと会議室に来てくれ」などと場所を変えて、じっくり部下と向き合うようにすることです。部下も「事の重大性」を認識するはずです。