神戸徳洲会病院で相次いだ医療事故の報告書に「複数の誤り」…遺族「不誠実な対応、どう終結させるべきか苦しい」
神戸徳洲会病院(神戸市)で医療事故が相次いだ問題で、病院側は、死亡例など15件に対して行った院内検証をおおむね終えた。ただ、調査報告書には事実関係の誤りが見つかるなど、不適切な検証のあり方も透けて見える。思わぬ形で身内を亡くした遺族は、病院側の説明をどう受け止めたのか。(中田智香子) 【図表】神戸徳洲会病院を巡る動き
当初「命に関わるほどではない」…突然の別れ
「終始、説明が人ごとのようで納得がいかない」。昨年1月、心臓のカテーテル(医療用の細い管)検査後に亡くなった80歳代男性の遺族は不満を漏らす。
男性は 嘔吐(おうと)が続き、同病院を受診。循環器内科の医師から「心臓が弱っており、緊急手術をする」と説明を受けた。実際に行われたのはカテーテル検査で、その後1日半ほどで死亡した。
男性は受診時には歩けていた。医師も当初は「命に関わるほどではない」と言っており、「突然の死」だった。死因は肺炎とされ、詳しい説明はなかった。
昨年7月、ある報道が遺族の心をざわつかせた。同病院でカテーテルの検査・治療関連の死亡が複数あるとの告発を受け、神戸市が調査に入った、という。
その後、カテーテル以外での「事故疑い」の死亡も相次ぎ、病院は死亡4件を医療事故調査制度の対象として調査。この男性の事例を含む他の11件(うち生存1件)についても、院内で検証する方針を示した。
別人とみられる筆跡の見覚えのない同意書
遺族は死亡した原因がわかると期待した。だが、病院がまとめた検証結果で逆に疑念が深まったという。
今年5月末に届いた「個別検証報告」は実質3ページほどで、死亡とカテーテル検査の関連性は認められないと結論付けていた。受診日に明らかな誤記があったほか、読んでも治療経過すらよくわからない。
不信感からカルテの開示請求を行うと、別人とみられる筆跡で、男性の妻の署名の入った見覚えのない同意書が出てきた。
さらに外部専門家の協力を得てカルテと報告書を分析すると、▽「来院時の心臓エコー所見」とするデータは、来院翌日のもの▽来院日に抗生剤を投与したように読めるが、カルテによると投与は翌日――など、複数の 齟齬(そご)が見つかった。