最安値競争が加速するファッション業界: ウォルマート がZ世代の顧客を狙う一方でシーインは価格を引き上げ
6月中旬、引き続き、ファッションはウルトラファストファッションとウルトララグジュアリーに二分されていた。 ファッション業界のリーダーとの対談やウィークインレビュー(Week in Review)のエピソードはグロッシーポッドキャスト(Glossy Podcast)を、美容品業界における対談についてはグロッシービューティーポッドキャスト(Glossy Beauty Podcast)をお見逃しなく。
最安値を競い合う業者たち
6月上旬のファッション業界でも、最安値という下端をめざす競争は続いていた。 ウォルマート(Walmart)は、自社のプライベートブランドで、30年前に創設されたノーバウンダリーズ(No Boundaries)の再ローンチを発表した。新たに改修されたこのブランドは、非常に安い価格で若い層やZ世代の消費者を積極的に対象とする。 商品の80%以上は15ドル(約2370円)以下で販売され、いくつかのTシャツはわずか5ドル(約790円)だ。ノーバウンダリーズはウォルマートにとってすでに20億ドル(約3160億円)を超えるビジネスで、この刷新によってさらに多くの若い層の顧客が、ほかの同様な低価格ブランドから乗り換えることを同社は期待している。 一方で、非常に低価格なほかの会社も順調だ。英国のマーケティング企業のオムニセンド(Omnisend)が行った調査の結果が公表され、ティームー(Temu)がeBayなど、より実績があるほかの企業よりも多くのリピート顧客を集めていることが明らかになった。 しかし、ティームーもいまだAmazonには届いていない。調査対象となった1000人のうち、34%以上は毎月1回以上ティームーで何かを買い求めている。 ティームー、シーイン(Shein)、ノーバウンダリーズなどのウルトラファストファッション企業の隆盛は、経済の沈滞により多くの顧客が財布のひもを締めたのと時を同じくしている。その一方で、シャネル(Chanel)のようなラグジュアリーブランドではより高い価格への引き上げもあり、それらの両極端のあいだに属するエクスプレス(Express)のようなブランドの状況は厳しくなっている。 エクスプレスは4月に破産したあと、WHPグローバル(WHP Global)、サイモンプロパティグループ(Simon Property Group)、ブルックフィールドプロパティーズ(Brookfield Properties)、センテニアルリアルエステート(Centennial Real Estate)から新たに形成されたジョイントベンチャーのフェニックス(Phoenix)により、金曜日に破産状態で買収された。同グループはボノボ(Bonobos)も買い取った。 多大な成功を収めたシーインが、ファストファッションブランド間で最低価格をめざす競争を主導したことは明らかだ。しかし、各社が競争のため価格を引き下げるなか、シーインは逆の方針を打ち出した。 ロンドンで6月中にもIPO(新規公開株)を発行するのに先立ち、価格を引き上げたのだ。エディテッド(Edited)からのデータによれば、シーインはこの数カ月に商品の3分の1以上の価格を引き上げた。 シーインは3月に、フランスで提案されている、超低コストのファッションブランドを対象として、環境への影響に対する懲罰を加える規制の対象となった。同社が中国の外で正当性を獲得しようと試みるなか、この値上げは、低品質の商品という評判を払拭するための方法なのかもしれない。 [原文:Weekend Briefing: Walmart chases Gen-Z customers while Shein hikes prices] DANNY PARISI(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:坂本凪沙)
編集部