<ネタバレ検証>映画館で3回号泣「ロボット・ドリームズ」は「トイ・ストーリー」に匹敵する傑作だった
スペイン・フランス合作のアニメ「ロボット・ドリームズ」が、2024年11月の公開から1カ月半を過ぎてもロングラン上映中だ。米アニー賞で長編インディペンデント映画賞を受賞、アカデミー賞でも候補となりカンヌ国際映画祭でも上映されるなど、国際的に高い評価を受けた。日本でも興行収入1億3000万円を超え、小規模公開のアート系アニメとしては異例のヒットを記録している。筆者は初見で感情決壊、以来計3回鑑賞し、今も映画の中で流れていたアース・ウインド&ファイアーの「セプテンバー」を聞けば涙があふれそうになる。そんな「ロボット・ドリームズ」の魅力を検証したい。 【写真】孤独なドッグは〝友達ロボット〟と友情を築き、夏の終わり海水浴を楽しむが… 「ロボット・ドリームズ」の一場面
80年代NY ドッグとロボットの出会いと別れ
初めて見たのは、2023年、東京国際映画祭でのジャパンプレミア上映だった。衝撃だった。コミックからそのまま飛び出したような愛らしいキャラクターたちのビジュアルで完全に油断していたこともあり、自分の中のあらゆる感情がごちゃ混ぜになって放心状態。〝こんなに泣くなんて〟と自分でも驚くほど涙が止まらなかった。劇場公開された後も映画館に足を運び、気づけば合計3回見ていた。 舞台は1980年代のニューヨーク。孤独なドッグは寂しさを埋めるため、〝友達ロボット〟を購入する。ドッグはロボットに心を開き、どこへ行くにも連れて歩いた。やがて2人はお互いを支え合うパートナーとなるが、ある夏の終わりにロボットが動かなくなり、2人は離れ離れになってしまう。2人(1匹と1台だが)の親睦と別れを、セリフなしで描く。
愛らしいキャラ 抜群の音楽センス
本作には筆者の〝好き〟が集結していた。まずはドッグをはじめとする、ニューヨークで暮らす個性豊かな動物たちやロボットの描かれ方。サラ・バロンによる同名グラフィックノベル「Robot Dreams」が原作の本作は、先述した通りコミックからそのまま飛び出したようなキャラクターたちが主人公。彼らは、人間のように歩き、食べ、暮らしている。食事の時にエプロンをつけたり、水着を脱ぐ時にわざわざタオルで隠したりするドッグの描写が愛らしい。 ニューヨークに住む動物たちは誰ひとりとして同じことをしていなくて、みんな好き勝手に生きている。そして街そのものも、家やお店など映る全てがしっかりと描き込まれていて、作り手のニューヨークへの愛を感じた。そんな街で、ロボットはドッグと暮らし始める。好奇心旺盛なロボットは、ドッグをはじめ街中の動物たちをよく観察して、マネをする。食べ物を丸のみしたり、力加減が分からずやりすぎてしまったり、そんな、ロボットらしいちょっとズレた様子が愛嬌(あいきょう)たっぷりに描かれている。 作中に流れる音楽のチョイスが絶妙だった。セリフがない代わりに楽曲の歌詞が、キャラクターの心情を表現する役割を担っている。ロボットとドッグが仲良くなっていく描写のバックで流れる、アース・ウインド&ファイアーの「セプテンバー」。ロボットにとってドッグとの思い出そのものとなる。あるいは、機能停止して動けなくなったロボットを巣の代わりにしていた渡り鳥が、季節が替わって旅立つ際に合唱する「ダニー・ボーイ」。鳥たちとロボットとの別れの寂しさが切々と漂った。ウィリアム・ベルの「Happy」は、映画後半に登場する、孤独ながら人生を楽しんでいるラスカルの象徴だった。映画から離れて日常に戻っても、曲が映画を思い出すきっかけとなって、いつの間にか彼らのことを考えてしまう。「セプテンバー」を聞くだけで涙が出そうになるのは、きっと筆者だけではないはず。