【vol.1/”普通”って誰が決めたもの? 視野が広がる谷口菜津子さんの作品をご紹介】
“こうじゃなきゃ”って誰が決めたっけ? 固定概念を覆す谷口菜津子さんの視点
今月から、カルナビページにコミックが仲間入り。「漫画好きなんだからやってみたら?」との副編集長の一言で(わーい!)、担当になりました、編集やまみです。思えば風邪で小学校を休んだ日に初めて『りぼん』を買ってもらって以来、センター試験の前日も、仕事でミスして落ち込んだ日の夜も、陣痛合間のスキマ時間も、振り返ればいつだって漫画を読んで過ごしてきました。この連載では新旧作品の紹介をはじめ、漫画に携わる方へのインタビューや取材などもできればと思っていますので、これからどうぞよろしくお願いいたします! そんな初回は、大好きな谷口菜津子さんの作品をご紹介。長年の彼女が作ってくれた料理に「全体的におかずが茶色すぎるかな?」とのたまう主人公・勝男が、失恋をきっかけに変わろうと努力する『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は、さまざまな場面で“価値観のアップデートを”と言われる今こそ読みたい一作。同僚たちの助言もあり、勝男の中で凝り固まった“男・女たるもの”がほぐれていく様子を見ていると、いけすかないはずの彼をいつしか愛おしく感じてしまうはず。続刊も楽しみ。頑張れ勝男! 第26回手塚治虫文化賞 新生賞を受賞した『今夜すきやきだよ』は、’22 年にドラマ化も。女性2人が同居生活を送りながら、世の中の“こうあるべき”に負けじと心地よい生き方を模索する姿を見ていると、今までなんとなく受け入れてきた常識や慣習を見直すきっかけに。いろんな友情の在り方を描いた短編集『うちらきっとズッ友』は、多様性なんて言葉を流暢に説明されるよりもずっと、読後豊かな気持ちに浸れます。 谷口さんの作品はいつだって、可愛い絵柄でグサグサと“そういうものって誰が決めた?”と気付かせてくれるんです。普通の結婚、普通の人生……それって誰にとっての普通? 私自身、子どもを預けて飲み会に行くときや総菜を食卓に並べるときに罪悪感を覚えることも。それは自分の中に“普通は母親ってこういうもの”という縛りがあって、そこから外れることを後ろめたく感じるからなんですよね。そんなときこそ谷口さんの作品を読み直して、ほかの誰でもない“自分らしく・自分の家族らしく”いられる選択肢を大事にしたいと思うのでした。