藤川監督V奪還へ一歩ずつ…打線の中心は大山、決断に他人は関係ない
今季から阪神の指揮を執る藤川球児監督(44)が読売新聞などのインタビューに応じた。2023年にチームを日本一へ導いた岡田彰布(あきのぶ)前監督(67)の後を継ぎ、球団創設90周年を迎える監督1年目にも「重圧は全くない。一歩ずつ進む」と泰然自若とした口ぶりだった。(聞き手・細田一歩)
――フリーエージェント権を取得した大山、坂本、糸原、原口が残留した。 「非常に大きい。彼らが前向きな気持ちでいてくれることが力になる。チーム作りは滞りなくできると思う」 ――打線を組む上で中心になるのは。 「コアは大山。25年から勝ち続けていく集団の、セ・リーグの、日本球界のリーダーシップを取ってもらう選手。彼が一番輝く打順に置きたい」
――大山の魅力は。 「勝負強さ、出塁率、一塁守備のハンドリング。紆余(うよ)曲折を経て今の立場をつかんだ選手なので、力強さを持っている。40歳を超えても現役でいられる基礎がある」 ――阪神のスター選手でもあった自身の影響力は大きい。 「メディアを通して発言する時、シーズンが始まってからは選手に厳しいことを言うのは非常に大事なこと。選手を守る意味でも」 ――その理由は。 「(敗戦などの)責任は必ず誰かにいく。監督が『あの選手は頑張っている』とかばってしまうと、かえってその選手が批判のターゲットになってしまうかもしれない。そうなると、選手がしんどくなる」 ――シーズンに入れば、自身にも批判の矛先が向く可能性がある。 「一過性のものだと思う。みんな、言われた瞬間は気になるけど、後から考えると(批判は)何も(心に)残っていない。自分の人生における決断に、他人は関係ないから」
――いつ頃から、その心境に。 「(15年に米大リーグで自由契約になり)独立リーグにいった時ですかね。他人から承認されたいという欲を捨てた。野球の中に自分の人生があるのではなく、自分の人生の中に野球を置けるようになった」 ――球団で監督デビュー年に優勝した人はいない。 「前の人と比べても仕方ない。岡田前監督が能力を持ったスタッフと、力のある若い選手たちを残してくれた。過渡期を迎えさせないために、どうするか。その決断だけじゃないですか。僕がやるべきことは」
座右の銘「球進一歩」
藤川監督は就任にあたり、座右の銘を「球進一歩」に決めた。往年の名投手で球団OBの村山実さんから受け継いだ岡田前監督の「球道一筋」を基に「球道を一歩ずつ進む」との思いを込めた造語という。「村山さんのようになりたいと言って入団し、岡田監督に育てていただいたから」と説明した。 前監督の座右の銘は当初、「道一筋」だった。村山さんへの尊敬の念から「そのままもらうのは失礼」と2023年の日本一達成まで「球」を抜いていた。藤川監督の4文字からも、偉大な先輩を追おうとする気概が伝わってくる。(細田)