30代公務員夫婦の“理想の新居”に潜む落とし穴。家事時短できない原因は「間取り」!?
日本の住まいの満足度は33%……不満の理由は”間取り”でした。一見すると、おしゃれで素敵そうに見える間取り。でもそこには大きな落とし穴が隠れていることも。住んでみないとなかなか見えてこない隠れた暮らしにくさ。『この間取り、ここが問題です!』では、いままで3000件以上の間取りを診断してきた一級建築士・船渡 亮氏が、25の具体的な間取りからその問題点を指摘。より住みやすい間取りを提案します。 【画像を見る】50平米、5人暮らし「狭すぎるキッチン」を激変させた意外なモノとは?
家事時短できない原因は間取り
多くの方が、「昔と比べると、家事は楽になった」と感じていると思います。確かに、1976年と2016年を比較すると、30代女性の一日の家事・育児・介護時間は36分減少しています。女性の家事負担が減ったことは喜ばしいのですが、実は同じ30代男性の家事・育児・介護時間は34分増えています。(「男女共同参画白書令和2年版」内閣府) つまり、家庭全体で家事時短になったわけではなく、女性の社会進出の結果、男性が家事負担する割合が増えた、というのが実情です。男性が(多少)家事をすることで、女性の家事負担が(たとえ30分ほどでも)減るのはよいことですが、これだけ便利になったにもかかわらず、家族単位の家事時間が減っていないのは驚きです。世の中にある様々な家事手法は、全体でみると「家事時短」にはほとんど寄与していないことになります。 料理や裁縫のように、個別にみると「家事時短」している部分もありますが、掃除や洗濯は時短できていないようです。日本のロボット掃除機の普及率は1割未満ですし、自動化できるのは床掃除だけなので階段や水廻りなどは自分で掃除しなければなりません。洗濯は部屋干し中心になりましたが、除湿器を使うなどの手間が増えました。またモノが増えているにもかかわらず、収納量は変わらないので片付けしにくいと感じる人が多いです。 また、「ゴミ分別」や「通販段ボールの処理」「洗剤やシャンプーの詰め替え」「ミネラルウォーターの購入」など40年前にはなかった新たな家事も追加されました。 このように変化が早い世の中で、家事時間と同じく40年前と変わらないものがあります。それは私たちが暮らす家の間取り、そして家事動線です。間取りと動線こそが家事時短を阻む根本原因だと私は考えます。次のページでは、一見すると「よくできた間取り」に潜む「暮らしにくさ」について、事例を交えて解説します。