日本は「デジタル円」を導入するのか? 世界で実証実験が進む「デジタル通貨」のメリット・問題点を専門家が解説
◆「デジタル円」を導入した際のメリットは…
ユージ:そうしたなか、日本も議論を進めることになったわけですが、デジタル円のメリットは何でしょうか? 塚越:まずは(実物の)紙幣・貨幣が必要なくなるので、印刷などのコスト削減、偽造防止になります。デジタルデータなので、お金の流れを「見える化」できるというメリットがあります。 さらに、電子マネーによる「給料のデジタル払い」の検討も進んでいて、とりわけ外国人労働者の人は送金が楽になるなどのメリットがあり、(企業側も)こうした人の受け入れ拡充にもつながる可能性があります。企業としても、支払いや決済の円滑化が進むので、何かと便利です。いちいち現金を手渡さなくて済みますね。 また、現金以外の決済に慣れている人にとって、給料をデジタル払いで求めることも可能になります。デジタル円は日本銀行が発行するので信用度も高いわけで、電子マネーにチャージすることなく、すぐにスマホなどで使えるのもメリットかなと思います。
◆今後の課題は「法整備」と「プライバシー問題」
ユージ:デジタル円の導入に向けた今後の課題は何でしょうか? 塚越:いずれにしても、まずは法整備です。今の日本の法律ではデジタル通貨を「法定通貨」と認めていません。例えば、現金のようなモノではないので、所有・移転に関して民法上の整理があります。もちろん、偽造・複製といった不正に関する刑法上の整理も必要になります。 さらに重要なのは「プライバシー」。現金よりもデジタル通貨は、良くも悪くもお金の流れが「見える化」されるので、個人のプライバシーがきちんと確保されるように制度設計を組み直す必要があります。 一方で、テロ資金の供与やマネーロンダリングを防ぐための方法も確立しなければなりません。そう考えると、課題は多いです。 もう1つは、すでにキャッシュレス決済などがそれなりに普及しているなかで、デジタル円を使うことに対しての価値を、国民がどのくらい判断するか。 「他国もやっているから」というのも導入の理由にはなりますが、デジタル円によって(国民の生活が)どのくらい便利になるのか、どういう意味で必要になるのかについて考えると、今の段階ではそこまで必要ではないのかもしれません。 世界では「デジタル人民元」の実証実験などいろいろやっていますが、そこまで進んでいないという話もあるので、これから議論をして詰めていく必要があると思います。今は「デジタル通貨」「デジタル円」という言葉を覚えておいてください。 (TOKYO FM「ONE MORNING」2024年2月1日(木)放送より)