軍事のプロが解説「公開情報だけで分析する方法」とは?米露の情報機関も9割以上は公開情報を元に分析している
問題はその「ある程度の事実」をどうやって深読みするかなのです。 ■情報の傾向の変化を見る 第2に、個々の情報はアテにならないとしても、その傾向の変化を見るというアプローチがありえます。 現在のウクライナ戦争を例に取りましょう。ウクライナとロシアの参謀本部は双方とも戦況を定期的に報告しています。これらの公式発表をずっと追っていくと、「最近になって戦果の報告が増えている。本当にこれだけ勝っているかどうかは別として、戦線での戦闘が激しくなっているらしい」ということがわかったりするわけです。
これは公刊情報を個別に扱うのではなくて、一種のメタ情報として扱うアプローチですね。前述した深読みとは逆です。相手の言っていることを一旦真に受けて、その通りに表計算ソフトなんかに入力していく。するとそこに一定の傾向が見えてきたり、あるいは全くでたらめばかり言ってるんじゃないか? という疑いが生まれてきたりします。 第3に、情報の中には隠しておいたら無意味になる、という種類のものがあります。 スタンリー・キューブリックの映画『博士の異常な愛情』に、こんなシーンがあることを覚えている方もいるでしょう。ソ連には、アメリカの核攻撃に対して自動的に報復を行う兵器(世界破滅マシーン)がある、というソ連大使に、ストレンジラブ博士がこう詰め寄ります。「そんな兵器が存在するなら公表しなければ意味がない。なぜ隠していたのだ!?」
軍事力というのは抑止力としての側面を持っていますから、「こっちは強いんだぞ」とか「我々に手を出したら破滅だぞ」とアピールしないといけないわけです。その詳しい数や性能までは明らかにできないとしても、全く知られていないのでは意味がない。 だから、OSINTを丹念にやっていくと、分析対象が「みんなに知っていてほしいこと」がかなり明確にわかってきます。 ■人情とコンプライアンス 第4に、人情として隠しておきにくい情報というものがあります。例えば冠婚葬祭に関する情報なんかがそうですね。新聞にはよくこういう情報が載ります。