「目の前の命を絶対に助ける」自殺の名所“東尋坊”で20年以上にわたり846人を保護 自殺防止活動を行う男性の想いとは
■自殺を考えていた ケンさん(51)
3年前、ケンさんは借金が原因で自殺を考え、東尋坊へ向かった。「原因は4000万くらいの借金。死に場所をさまよって保護されたというかたちだ」と当時を振り返った。ギャンブルや不動産投資で借金を抱え、取り立てから逃げるために東尋坊を訪れたという。 そこで茂さんに「何しているのか。自殺しようと思っているのではないか」と声を掛けられた。ケンさんは「とりあえずもうどうしようもなかったという気持ちがあった」が、「保護された時、他人なのに声を掛けてくれる人がいることに、ちょっと心がほっとした」。 その後、NPOの支援で自己破産・生活保護の申請、住居準備がなされた。現在は持病があるため働くことが難しく、生活保護を受給しながら月に数回NPOの手伝いをしている。ケンさんは「皆さんと会話できるのは楽しいし、心の安らぎになるので感謝している」と話す。 茂さんに対してケンさんは「あそこで声を掛けてくれたということに対して、感謝の気持ちしかない。こうやって今生きているのは茂さんのおかげだと思っている」と述べた。
■「必ず生きていて良かったと思うことがある」
「日本財団 自殺意識調査2023」によると、若者の2人に1人が「死にたいと思ったことがある」。自殺を考えている人への最近の主な支援は電話相談やチャット相談。 茂氏は「面と向かって話すのが一番いい」といい、「本人らが望んでいるのは、自分の悩み事をなんとかして取り除いてほしい。できるなら、自分たちを追い込んでいる人がいたら注意してほしい。自分の環境の調整をしてほしいのが、あの人たちの叫び声だ」と訴えた。 コラムニストの小原ブラス氏は、出身国のロシアでは、ロシア正教の信者の自殺率が低いことを紹介する。「最も罪の重いことが自殺なんだと子どものときから教え込まれているから、自殺という選択があまり出てこない思考になるのかと思う。もうちょっと自死を選ぶという選択に歯止めをかけるように、あまりよくないことだという価値観を広めてもいいんじゃないか」との見方を示した。 治せない病気などで、死んでしまった方が楽だと考えている人についてはどう考えるか。茂氏は「この活動を開始したとき、がんや余命宣告を受けている人が岩場に立っていたらどういう言葉をかけようかというのが最初の問題点だった。でも20年いて、余命宣告を受けて岩場に立っている人は一人もいなかった。みんな周りの人が注意してくれている」と答えた。 最後に自殺を考えている人に向けて、茂氏は「必ず言うのは、“生きてさえいれば必ず良かったと思うときが来る”と。“今の長いトンネルがずっと続くんじゃない。必ず終わりがある”。焦るな、慌てるな、人と比較するなと」とメッセージを送った。 (『ABEMA Prime』より)
ABEMA TIMES編集部