政府・日銀の為替介入、過去最大の9.8兆円-29日までの1カ月間
(ブルームバーグ): 財務省は31日、4月26日-5月29日の為替介入額が9兆7885億円だったと発表した。月次ベースの介入額として過去最大を更新。日本銀行が3月に17年ぶりの利上げに踏み切った後も日米金利差を主因に円安の流れに歯止めがかからず、通貨当局は介入も辞さない構えを示していた。
円買い介入はこれまで最大だった2022年10月分(6兆3499億円)を上回り、24年ぶりに実施した同年9月22日分(2兆8382億円)を合わせた約9.2兆円も超えた。日銀の当座預金残高を基づく短資会社の推計では、円が34年ぶり安値水準の1ドル=160円台に急落した4月29日と、再び157円台に下落した5月2日に政府・日銀は総額9.4兆円を投じた可能性があるとみられていた。
日次ベースの介入実績は、4-6月分が公表される8月上旬にも判明する。
神田真人財務官は、為替介入は「24時間体制」で必要な時には適切な対応すると述べて市場を強くけん制する一方、介入実施を肯定も否定もせず「ノーコメント」を貫いてきた。今回の結果により過度の円安阻止へ通貨当局の断固たる姿勢が改めて示された格好だ。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、ドル・円とほぼ連動している米長期金利の上昇度合いから判断すると、介入しなければ円安はさらに進んでいたはずだと指摘。約10兆円の介入が円安に歯止めをかける「政策効果はあった」と語った。
月次ベースの介入額の過去最大はこれまで11年10月28日-11月28日の9兆916億円だった。当時の円は10月末に一時75円35銭と戦後最高値を記録し、当局がさらなる円高を阻止するため円売り介入に動いていた。
為替介入額は過去最大の9兆916億円、10月末以降も「覆面」実施か
今回の介入額が市場の推定を上回ったことで、介入の効果に対する疑問が高まる可能性がある。円相場は29日に一時157円台後半まで下落し、介入観測があった2日の水準まで戻った。好調な米国経済を背景に日米の金利差を意識した円売り圧力が根強い中、日本の介入余力にも関心が集まる。