マッチングアプリの恋愛、なぜ難しい? ユーザーたちの「リアルな感想」をさぐる
恋愛に"効率"を求めることの難しさ
出会い系企業を経営する人々が理解していない(あるいはあえてあいまいなままにしている)こととして、「ロマンスやエロティシズム」と「効率」の間には一切何の関係性もなく、自分自身すら理解できていない自己と気まぐれがすべてである、ということがある。 それは、その瞬間瞬間で天気のように変わりやすく、その一方でパターン化もされている自己の欲望をどのように実現するかであったり、より広い世界との関係において、自分自身をどのように理解するか、などだ。テクノロジーの世界では非効率とされていることが、実はあなたが何者であり、何を望んでいるのかを知るうえで重要な役割を果たしているのかもしれない。 あるいはテクノロジーの世界は、すでにそれを理解しているのかもしれない。冒頭で登場したTinderの共同創業者ウルフ・ハードも、プライベートでは、夫とIRL(現実の世界)で出会っている。きっかけはアスペンのスキー場での何気ない会話からだった。
変化する「最新デート事情」
フィラデルフィア出身のミュージシャン、ルークは、友人を通じた他者との出会いに成功している。うまくいくかどうかは別として、彼はアプリとは距離を置き、コミュニティで出会ったパートナーを優先したいと考えている。「本当の人間関係を築くためには、社会生活を送らなければなりません。出会いを求めるなら、友人を持つのが一番です」。 その形がどうであれ、デートの仕方に変化が起こりつつあるのは確かだ。その方法のなかには、AIアバターが600人のAIアバターを一瞬でスキャンして、選ばれし何人かのマッチング相手を見つけてくれるという効率的な方法も含まれているかもしれない。しかし、拒否すること、すべてを別の視点から考え直すこと、そして互いを気遣うこと、相手を知るという行為に決して効率さだけを求めないことが、まったく異なる道をあなたに示してくれるかもしれない。 もしも十分な数の人が過去10年間のパラダイムを拒否すれば、その道は、セックスやパートナーシップ、あるいは私たちが愛と呼ぶ神聖で、私たちを当惑させるような自由市場的な経済とは別のものとなるかもしれない。 昨年、詩人のエイミー(28歳)は、出会い系アプリをすべて削除した。そしてそれから間もなく、ヨガのクラスに非常に魅力的な女性がいることに気づいた。エイミーは次の行動を決めかねていた。「相手が私に好意を持っているかどうかは勿論わからないし、そもそも相手がクィアなのかどうかすらもわからない。そんな混乱した状況にいるのは非常に奇妙な気分でした。出会い系アプリならば、そんなことはまずないからです」。 しかしその後、エイミーは、とあるコンサートでその女性に遭遇。思い切って彼女をデートに誘った。それ以来、2人は付合っている。 (※経験談を語ってくれた人物はすべて仮名です)
From Harper's BAZAAR October 2024 Issue