クルマが好きでたまらない! 「シトロエンBX」「ホンダS2000」「いすゞピアッツァ」20代若者たちを虜にするヤングタイマーと都市で暮らす。
お金はかかる。それでもクルマは楽しい!
──みなさん横浜のご出身だとうかがっていて、後藤さんは現在、都内にお住まいとのことですが、クルマを所有、維持するにあたって苦労なさっているのはどんな点でしょう? 本田 私は実家暮らしで、実家のマンションの駐車場に置いているので特に苦労はしていません。強いて言えば、いまのクルマに比べればうるさいし、排ガスも匂いがあるので、周囲の理解を得ることでしょうか。20分も30分も暖機運転はしないとか、深夜や早朝は静かにするとか。 ──シトロエンBXはメインテナンスに手がかかるというイメージですが、そのあたりはいかがでしょう? 本田 懇意にしているショップの敷地をお借りして、できるだけ自分でメンテをしています。パーツを友人と一緒に輸入して輸送費を削ったり、そうした工夫はありますが、どちらかというと苦労というより楽しんで維持していると思います。 甲野 僕も実家だし、ホンダS2000はまったくトラブルがないので、維持に苦労することはありませんね。ただ、最近もう1台、車高が低くて幅が広いクルマを買うことが決まって、そのための屋根付き駐車場を探していると、意外と空きがありません。やはり地方に比べると、駐車場を探すのは大変かもしれませんね。最近は盗難の心配もありますし。 後藤 僕は実家暮らしのぬるいふたりと違って(笑)、ひとり暮らしをしているので、都内に屋根付きのガレージがあるマンションを探すのに苦労しました。食費とかもあるのでお金はまぁまぁかかりますが、やっていけないほどのことはないし、クルマの楽しさを思えば問題ありません。
「若者のクルマ離れ」にさようなら
──若い人がクルマを所有したり維持するにあたっては、みなさんのような仲間、コミュニティがあるとハードルが下がると思います。本田さんと甲野さんの出会いはうかがいましたが、そこに後藤さんがジョインしたのにはどんなきっかけがあったのでしょう。 後藤 2020年だったと思うんですが、夜、走りに行こうと思って首都高の大黒パーキングエリアに向かいました。そこに本田の緑のBXが停まっていて、格好いいなと思ったら、クラシックカー好きが集まる三浦半島の「Revival CAFÉ(リバイバルカフェ)」のステッカーが貼ってあったんです。僕もよく行くんですよ、というところから話が始まりました。 本田 なにに乗っているんですか? と聞いたらピアッツァですと言われて、おおっ! さっきパーキングに入ってきた白いやつか、となってからは話が早かったです(笑)。 ──大黒に集まるクルマ好きの知り合いというのは、何人ぐらいいるのでしょうか。 甲野 顔見知りとか、知り合いのレベルだったら、50人とか100人ぐらいになると思います。本当に仲良くコミュニケーションをとっているのが20~30人くらいかな。別に何曜日の何時に集まるとかは決まっていなくて、暑くもなく、寒くもなく、雨が降っていない日にふらりと行くと、だれかがいる感じです。 ──「YOKOHAMA Car Session」の言い出しっぺはどなたですか? 後藤 僕です。横浜生まれのクルマ好きとして、赤レンガ倉庫にクルマを並べるイベントをやりたいという夢があったんですね。港北のIKEAに遊びに行ったときに、帰りに駐車場で甲野にイベントやりたいんだよね、とぼそっと伝えたんです。それがスタートで、本田も巻き込んで、あとはさまざまな先輩方に協力していただきながら、徐々に実現に近づけました。 ──若い人にクルマを楽しんでもらいたい、というような目的があったのでしょうか。 後藤 そうした大義名分は後づけで、根底にあるのは自分たちがやっていて楽しいからだと思うんです。でも、「若者のクルマ離れ」という言葉がひとり歩きしている感はあって、別にそうじゃないんだけどな、という思いはありました。 本田 クルマ好きの数は減っているかもしれないけれど、濃度が上がっているような気がするんです。もしかすると僕らのひとつ上の世代がクルマ離れをしていて、経済的にリーマンショックの影響を受けていない僕らの世代からは、またクルマが好きになっているのかもしれない。 甲野 僕らもあと数年で30歳ですから、できればこういう楽しさだったりイベントだったりを10代、20代の人に受け継ぎたいという思いはあります。 後藤 赤レンガ倉庫でやったことには意味があって、あそこだと普通のクルマのイベントと違って、通りがかりの人がふらっと寄れる。高校生が電車で来ることもできる。若い人から、このクルマに乗りたいんだけどどうですか、と聞かれるのはすごくうれしいし、逆に年配の方から、これに乗っていたんだよねと話しかけられたりして、すごく盛り上がりました。 本田 これからもいくつかイベントのアイデアがあるので、いまクルマに乗っていなくても、興味のある人はホームページをチェックしてほしいです。クルマを維持している仲間ができると、いろいろノウハウも聞けるし、そんなに敷居が高いことではないと思えるはずです。 後藤 イベントなどで僕らを見かけたら、気軽に声をかけてください!
文= サトータケシ 写真= 内藤敬仁