阪神を開幕最速10敗に追い込んだ「記録に残らないミス」
そして「攻撃面でも記録に残らないミスがあった」と高代氏は指摘する。 6回の糸井の走塁だ。一死二塁から大山は、三塁への高いバウンドのゴロの内野安打でつないだが、二塁走者の糸井は三塁へ進塁せず、二塁に戻ってしまっていたのである。 「糸井のリードが小さいのは気になっていたがスタートも遅れていた。それでも宮崎は、かなり前へダッシュして打球をギリギリのタイミングで処理して一塁へスローしており、その動きを見てスタートを切っても三塁はセーフだった。準備不足だし完全な判断ミス。野球に”たられば”はなくランナー三塁となれば相手バッテリーの攻め方も違ってくるだろうが、続く糸原はセンターフライを打っているから犠飛で1点が入っているところだった。打線が不振だけに、こういう細かいワンプレーをお粗末にすると最後にツケとなって巡ってくる。負けるべくして負けているとも言える」 一死一、二塁の追加点機から糸原がセンターフライ、今度は糸井が三塁へタッチアップして一、三塁にしたが続く坂本が三振で追加点を奪えず、伊藤が完封勝利目前の9回に牧の同点タイムリーを浴び延長にもつれこむことになったのである。 新クローザー候補の湯浅が無死三塁のピンチを角度のあるストレートと落差のあるフォークで切り抜けるなど収穫はあった。だが、前日待望の今季1号を放った佐藤は、すべての打席でストレートに差し込まれていた。中野は5回二死満塁でストレートに三振。7回一死一、三塁でも初球の難しい外角ストレートを捉えたがショート正面をつくライナーに終わるなど、チーム全体としてストレートを打ち返せず打線は完全に力負けをしていた。 関西のスポーツ各紙の報道によると、試合後、矢野監督は、「一本出ていないのが課題の部分でもあるし、最後の1イニングをどう抑えるかっていうピッチャーを育てていく課題が開幕からある」とコメントしたという。元阪神監督の故・野村克也氏は「負けに不思議の負けなし」と説いたが、その敗因を深く掘り下げていかねば、巻き返しへのきっかけはつかめない。 (文責・論スポ、スポーツタイムズ通信社)