英文読解より、英文≪鑑賞≫のほうが大事。英語を味わうコツをしっかり伝授―北村 一真『名文で学ぶ英語の読み方』橋爪 大三郎による書評
≪英語の意味を正しく理解する≫英文読解より、英文≪鑑賞≫のほうが大事。≪「上手いこと言うなあ」と、思わずニヤッと≫できたら、楽しくて身につく。とても正しい。だから英語の本をまる一冊読んでみましょう。その準備のための本だ。 いきなりではむずかしいので、まず『イソップ物語』の英語訳で肩慣らしだ。「北風と太陽」「狼少年」など筋を知っているのですぐ読める。英語を味わうコツをしっかり伝授。受験の英文解釈の上を行っている。 調子が出たところで小泉八雲「雪女」、アンブローズ・ビアス「ジョン・モートンソンの葬儀」を読む。どちらも怪異譚でスリル満点、ドキドキしながら読み進めて行ける。 最後はジョージ・オーウェル『動物農場』、子供向け小説の傑作だ。後半の風車のくだりを味わう。 著者は大学院生時代に予備校で大学受験の英語を教えた経験がある。それを活かした著書も多い。その昔私も“Animal Farm”をペンギンブックスで楽しく読んだが、いまは電子書籍がある。本書の作品はみなインターネットで公開されているのでぜひチャレンジを。著者のお勧めだ。読解よりまず鑑賞。大賛成である。 [書き手] 橋爪 大三郎 社会学者。 1948年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。執筆活動を経て、1989年より東工大に勤務。現在、東京工業大学名誉教授。 著書に『仏教の言説戦略』(勁草書房)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)、『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『社会の不思議』(朝日出版社)など多数。近著に『裁判員の教科書』(ミネルヴァ書房)、『はじめての言語ゲーム』(講談社)がある。 [書籍情報]『【Amazon.co.jp限定】名文で学ぶ英語の読み方』 著者:北村 一真 / 出版社:SBクリエイティブ / 発売日:2024年08月7日 / ISBN:4815622957 毎日新聞 2024年9月28日掲載
橋爪 大三郎
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