「岡山芸術交流2025」タイトルは「青豆の公園」に。村上春樹作品から着想
2016年以来、岡山市中心部の岡山城・岡山後楽園周辺エリアで3年に一度開催されている国際現代美術展「岡山芸術交流」。次回「岡山芸術交流2025」(会期2025年9月26日~11月24日、52日間)のタイトルと参加作家が発表された。 これまでの3回、リアム・ギリック、ピエール・ユイグ 、リクリット・ティラヴァーニャがアーティスティック・ディレクター(AD)を務めてきた同芸術祭。今年のADは、パリを拠点に国際的に活動するフィリップ・パレーノが務める。 パレーノが設定したタイトルは「青豆の公園」(The Parks of Aomame)。パレーノはこのタイトルについて、以下の通りステートメントで語っている。 村上春樹の小説『1Q84』に登場する謎めいたキャラクター「青豆」に触発された「青豆の公園」が岡山市内にて展開される。相互に結びついたこれらの公園は、現実と空想が交わる場として、青豆の静かな葛藤や二つの並行する世界に生きる複雑な存在を映し出すものとなる。 「岡山芸術交流2025」は、岡山の都市空間を現実と想像が自然に交わる場へと変貌させる。この壮大なプロジェクトは、岡山の公共空間、忘れられた場所、市民公園などを再構築し、驚きに満ちた地図を作り上げる。 この芸術交流は単なる視覚芸術の展示にとどまらない。その核には、独自の表現で新しい形を生み出すアーティストや音楽家、建築家、デザイナー、科学者、作家、思想家たちが世界中から集結する「ギルド」が形成される。 (中略) この多様なメンバーは、岡山を有機と合成、生物と人工物、現実と仮想が融合する実験の場に変える。岡山は考察の場となり、ギルドによって市民や来訪者が異なる瞬間や形態に触れる二か月間が始まる。日中だけでなく夜間もまた、特別な出来事が生起する。 「青豆の公園」は、横断歩道がステージに変わり、広場が交流と回想の場へと変容する、屋外展覧会である。日常の行き交いが発見の瞬間に変わり、トリエンナーレは多様な想像の場面を展開するものとなる。この体験の中心となるのが、街中に点在する作品群をつなぐルート、「青豆の道」である。歩みを進めるごとに、そこには小さくも儚い驚きが待ち受け、都市を巡る中で架空の物語が芽生え進化していく。ある場所で生まれたアイデアが都市空間を通じて成長し、思想や体験が相互に交わり合うことを促すのである。 岡山は単なる背景ではなく、この実験に参加する存在そのものとなる。 それぞれの作品やパフォーマンスは、岡山の都市空間に物語の層を重ね、並行する現実が都市のもう一つの姿を垣間見せる。物語の交差点では、訪問者が都市内で自身のルートを選びながら旅を進めることができる。都市全体が読み取られ、解釈され、書き換えられるテキストのような存在となる。街頭標識や建物の外壁、公共のアナウンスが架空の要素を反映し、都市の実際の歴史と想像の物語との境界が曖昧になるだろう。 市民や来訪者が集い、岡山の住人たちの夢や思いをこのトリエンナーレの物語に織り成していくことが求められる。芸術イベントと日常生活の境目は薄れ、架空のサービスや時のずれ、異なる歴史を記した銘板や碑などが実際の歴史的な記念物と一体となり、街並みに新たな歴史が刻まれるのである。 皆さんとお会いできるのを楽しみにしている。これは、きっと素晴らしい体験となるだろう。 参加作家は、シェヘラザード・アブデルイラー・パレーノ、マリー・アンジェレッティ、マルティーヌ・ダングルジャン=シャティヨン、アルカ、アニルバン・バンディオパダヤイ、ニコラ・ベッカー、イアン・チェン、ジェームズ・チンランド、メアリー・ヘレナ・クラーク、マティ・ディオップ、フリーダ・エスコベド、FABRYX、シプリアン・ガイヤール、ニコラ・ジェスキエール、リアム・ギリック、ホリー・ハーンダン&マシュー・ドライハースト、Isolarii、アレクサンドル・コンジ、ミレ・リー、ルクレシア・マルテル、中田英寿、ハンス・ウルリッヒ・オブリスト、プレシャス・オコヨモン、レイチェル・ローズ、ディミタール・サセロフ、ティノ・セーガル、 島袋道浩、サウンドウォーク・コレクティヴ、ラムダン・トゥアミ、アンガラッド・ウィリアムズ(12ヶ国30組)。 アーティストや音楽家、建築家、デザイナー、科学者、作家、思想家たちが世界中から集結し、たんなる視覚芸術の展示を超えて岡山の都市空間を現実と想像が自然に交わる場へと変貌させる。パレーノの手腕に期待したい。