SL人吉が引退、名残惜しむ乗務員、技術者 老朽化に部品調達、技術者確保難しく
SLの検査チームは10人前後で構成し、ベテランスタッフが若手へ技術をつないできた。熊本車両センターで日々の整備を担う山田恭輔(やまだ・きょうすけ)さん(42)は「今は若手が多く10年、20年後に復活しても対応できる」と自信を示す一方、SLを知る社員の減少を不安視する。 玉井さんも「保存するにしても、要請があれば出向いてメンテナンス方法を伝えたい」と意気込む。SLの価値も訴える。「今は電気やディーゼルで走っているが、最初は蒸気機関だった。鉄道の歴史を継承するためにも火が入った状態で残した方が良い」 SL人吉 JR九州が2009年に熊本―人吉(熊本)間で運行を再開させた観光列車で、蒸気機関車(SL)が客車をけん引する。2020年7月の豪雨により肥薩線が被災後は鹿児島線鳥栖(佐賀)―熊本間で運用した。SLは日立製作所が1922年11月に製造した「58654号機」で、国鉄前身の鉄道院が欧米を参考に量産した8620形の一両。長崎を振り出しに九州各地を巡り、1975年の廃車までの走行距離は300万キロ余りに達した。展示保存後、大規模修復で1988年に復活。観光列車「SLあそBOY」などとして活躍したが、2005年に車体の台枠のゆがみが修復不可能と判断されて運転を停止していた。