再熱する旧作ブーム!「シュリ」25周年に4Kデジタルリマスター公開 上映権が宙に浮いていたが実現!
「デジタルリマスター」「4Kレストア」などタイトルの後にこの文字が綴られているポスターを近年見かけるようになった。どれも旧作であり、公開当時、話題を呼んだ作品ばかりだ。 【写真】韓国を代表する俳優となったソン・ガンホも若々しい! 目につくものでは、今年はクエンティン・タランティーノ監督第1作目『レザボア・ドッグス』(1992年)のデジタルリマスター、リドリー・スコット監督の『テルマ&ルイーズ』(1991年)の4Kレストア、ジェーン・カンピオン監督の『ピアノレッスン』(1993年)の4Kデジタルリマスター、ジョエル・シュマッカー監督の『オペラ座の怪人』(2004年)の4Kデジタルリマスター他、多くの海外作品が上映されたが、海外のみならず日本のアニメーション映画『宇宙戦艦ヤマト 劇場版』(1977年)、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(1978年)の4Kリマスターもリバイバル上映されている。 しかも劇場には当時のファンは勿論、若者の姿もあるほどで、今後もミュージカル化もされた映画『リトルダンサー』(2000年)のデジタルリマスター、シルベスター・スタローン主演『ランボー』(1982年~)シリーズ3作が4Kレストアで上映される。これだけ旧作の劇場上映が続く理由は、作品の修復作業の完了が背景にある。確かに現代はデジタル撮影の作品が主流だが、2000年代初頭まではほとんどの映画がフィルムで撮影されていた。フィルムはデジタルと違い、色褪せや傷などの問題から保存は難しい。旧作の保存を目的とし、公開当時のクオリティを残しつつ、より鮮明な映像による修復を目指して、最新のデジタル処理を行うことを「デジタルリマスター」「レストア」と言い、4Kクオリティという高解像度の映像完成による記念上映が続いているのだ。 そんな中、映画の歴史を変えた一本がリバイバル上映される。 それは1999年に韓国で公開され、『タイタニック』(1997年)の記録を破る爆発的なヒットを記録した作品『シュリ』だ。日本でも翌年公開、臨場感ある銃撃シーンとロマンチックな愛の行方に「ハリウッドに匹敵する映画」と言われ、興行収入18億円を突破した。その後、『JSA』(2000年)や『猟奇的な彼女』(2001年)、『殺人の追憶』(2003年)、『私の頭の中の消しゴム』(2004年)といった韓国映画ブームを日本で巻き起こした原点と言える映画なのだ。実は本作、上映権が宙に浮き、劇場上映は勿論、配信で見ることも出来なかった。それを本作の監督であるカン・ジェギュにより4Kデジタルリマスターで公開25周年の今年、上映と配信が決定したのだ。 映画は、南北分断をテーマにしたスパイアクションであり、サッカー南北交流試合が予定されているソウルが舞台。愛する人との結婚を控える情報局員ジュンオンと相棒のジャンギルが多発暗殺事件の裏に潜む女性工作員やテロ組織を探る中、恐ろしい陰謀が隠されていることを知る社会派サスペンスだ。 ヒットの要因は、社会問題である南北分断という国をテーマにしたダイナミックなストーリーと壮絶な銃撃戦、そして切なすぎるラブストーリーだ。凄惨なスパイ訓練後、恋人同士のロマンチックなショットが映し出される。やがてこの真逆の世界が次第に混じり合っていく。私達観客は、人が行き交う都市で、人間の尊厳を賭けた銃撃戦と多くの人命の危機を目にするのだ。 4Kデジタルリマスター化した本作では、名シーンである夜の水槽の前でキスを交わす二人の姿が鮮やかな色彩で甦り、俳優たちの細やかな表情の変化が鮮明に映し出されている。そしてロマンティックな主題歌、キャロル・キッドのバラード「When I dream」をエンディングロールで再び耳にすることが出来るのだ。 振り返ると主演のハン・ソッキュは名優として当時から知られていたが、アカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』(2019年)で今や世界的に知られるソン・ガンホが相棒思いの情報局員として登場、他にも北朝鮮側の特殊軍団のリーダーは『オールド・ボーイ』(2003年)などの演技派俳優チェ・ミンシクが務めている。更にジュンオンのフィアンセとして名演を見せるキム・ユンジンはこの後、米ドラマ「LOST」(2004年~)にレギュラー出演するなど、『シュリ』のメイン俳優は皆、世界に通用する正真正銘の実力派となった。 確かに名作と呼ばれる世界に名を轟かせた映画達は、時を経ても時代遅れだと感じさせない映像センスだ。そして自国だけの物語だと感じさせない普遍的なテーマが根底にあるから何度見ても熱狂する。それが修復され、次の世代へと受け継がれるのだから「デジタルリマスター」化は、作品の保存という大切な作業なのだ。 (映画コメンテイター・伊藤さとり)
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