再雇用後の給料はなぜ大きく減るのか?企業が裏で駆使する「あの手この手で段階的に減給する」カラクリ
人生100年時代。「人生最後の職場を探そう」と、シニア転職に挑む50、60代が増えている。しかし、支援の現場ではシニア転職の成功事例だけでなく、失敗事例も目にする。シニア専門転職支援会社「シニアジョブ」代表の中島康恵氏が、今回は定年前後の減給について解説する。 定年後再雇用での大幅な減給は違法なのか? もし、大幅に減給されたらどうすればよいのか? 実際に大幅な減給となったシニアが良い条件の職場に移る支援をしている筆者が、過酷な現実を語る。
定年・再雇用で大幅な減給は違法?
今回は「給料の減少」についてお話ししよう。定年後の再雇用で大幅に給料を減額するのは違法では? という声もありそうだが、本当にそうなのか解説していきたい。 さて早速、定年後再雇用の際の大幅な減額が違法かどうかの話だが、結論を述べると、違法ではあるものの、何割以上減ると違法かは決まっていない。 定年前の給料の60%、つまり「40%減までが限度」という話を聞いたことがある人もいるかもしれないが、これはあくまでも裁判で示された判例であり、法律で決まっているわけでも、厚生労働省が通達で示したものでもない。 しかも、この裁判は最高裁から高裁に審議が差し戻されており、確定していない。今後は判例の内容が変わる可能性もある。 もちろん、企業側が定年と再雇用のタイミングで給料を好き放題下げてよいわけではなく、以前に比べれば定年前の半分以下になるような減給はあまり見られなくなってきている。 それでも、中小・零細企業などでは大幅な減額が珍しくないし、様々な方法を駆使して問題化しないよう巧妙に定年前後で給料を減らそうとする企業は多い。
あの手この手で段階的に減給する
「これ以上はアウト」という基準はなくても、定年・再雇用のタイミングで一気に何十パーセントも減らせば問題になる。だからこそ企業は、段階的に少しずつ、それぞれの理由に合理性を持たせて減らすことで、問題になるのを防いでいる。 例えば、昇給停止と役職定年はもはや説明がいらないくらいポピュラーだ。定時昇給を止めてそれ以上在籍しても給料が上がらなくし、55歳などの役職定年で役職を外して役職手当やその分を含んだ基本給を下げ、その上で、60歳定年を迎えれば、それぞれの下げ幅は低くてもトータルでは大きく減らせる。 また、定年や再雇用に必ずしも関係ないものだが、業績不振による減給が定年後の再雇用と同時や前後にあるケースもわりとよく聞かれる。これはコロナ禍の影響もあったかと思われるが、会社から「再雇用後の給料なんだけど、知ってのとおりウチも今、苦しいからさ…」といった具合に相談されるケースだ。 ほかにも、中高年ともなると徐々にガンや脳卒中、心筋梗塞などの大病を患う割合も増えてくる。そうした大病を患ったあとの復帰の際に、降格・減給となるケースもよく聞く(これは内容によってはグレーなのだが)。 業績不振や病気復帰後の減給の幅が10%を超えることはあまりないが、定年後再雇用での減給と併せるとかなり痛いものとなる。 さらに、出勤時間や出勤日数の制限もある。これは中小企業よりも大企業で多い。定年前までは当然1日8時間✕週5日間の出勤で、管理職でなければ残業代も支給されていたものが、ほとんど残業がないばかりか週3日の出勤に制限されてしまうことは多い。 出勤日数が減った分は、当然1日あたりの金額に換算されて月給から引かれてしまうので、仮にフルタイムの時と1日あたりの給与が変わらなくても、週5日から週3日への変更なら月の収入はそれだけで40%下がることになる。