地震の発生翌日には再開 台湾「鉄道のスピード復旧」なぜできた? AIで落石検知、「双単線」活用した暫定運行も
今回、板橋―新北産業園区間では、復旧当初は1本の線路のみを利用したシャトル輸送が行われたが、それでは運行間隔が普段の倍となってしまう。そこで5日からは輸送力増強のため、2本の線路にそれぞれ1つの列車を別方向に走らせ、終点に到着後は回送列車として折り返すという運行形態を採用。通常のホーム上での行き先案内に沿った形で、混乱の起きないスムーズな暫定運行が実現した。 さらに翌6日は、輸送状況に合わせて回送列車をそのまま途中駅を通過する快速列車として開放した。MRTの快速運転は空港線を除き稀なことで話題になるとともに輸送力の増強に一役買い、連休明け初日の8日にも朝ラッシュ時に2本が運転された。シャトルバスも継続して運転され、バスロケーションにも対応するなどここでも連携の速さが見て取れた。
今回の地震で、渓谷で有名なタロコ国立公園など花蓮地域は局地的に大きな被害を受けているものの、ほかの地域はこのように交通インフラはほぼ平常通り動いており、主要な観光地へのアクセスも問題ない状況だ。 日本人向けのガイドを職業とする台湾人の知人は「募金も嬉しいが、今回は自力でも復旧できるレベル、コロナ後は日本人観光客が少なくて寂しいのでぜひ来てほしい」と本音を語る。 ■台湾訪問が復興の支えに 日本の国土交通省にあたる交通部管下の観光庁は、4月4日付で「国内の各主要空港、港湾、鉄道、高速鉄道(新幹線)、市街のMRTなどはすでに運行回復」「台湾に安心してお越しいただける環境」と声明を発表。日本の支援に感謝するとともに交通や観光が正常通りであることをアピールした。
台湾を訪れる日本人観光客数は、過去最高を記録した2019年の219万人に対し、2023年は92万人と半分を下回った。また、台湾では海外渡航が再開されると同時に国内旅行の需要が減少し、地方を中心に厳しい状況が続く。 今回の地震で滑落した道路の橋桁の下からは日本統治時代の旧橋が出現し、その土台は復旧に活用された。台湾は意外な所で日本との深い関係を知ることができる場所だ。実際に台湾各地を訪れることも、復興への一つの貢献かもしれない。
小井関 遼太郎 :東アジアライター