ミサイル発射で挑発合戦、アメリカの北朝鮮攻撃は近いのか?
北朝鮮攻撃なら地上戦含めた徹底した攻撃が必要
北朝鮮が、実際にグアム近海にミサイルを撃ち込むかは分かりませんが、撃ち込んだとしても、軍事攻撃ではなくパフォーマンスに過ぎません。アメリカも、北朝鮮が日韓や米本土に反撃を行う口実となるような実害を与える反撃はできません。 もし北朝鮮に対する攻撃を実行するならば、湾岸戦争やイラク戦争と同様に、地上戦力を含めた攻撃準備を入念に行い、北朝鮮が反撃を行いたくとも、反撃が不可能となる徹底した攻撃を行う必要があります。 空爆しか行わないのであれば、既に多数のミサイルを持ち、核の搭載は不透明とは言え、化学兵器や生物兵器も大量に保有するとみられる北朝鮮が反撃に出た場合れば、大きな被害が発生することは避けられません。 特に、国境を接する韓国には、弾道ミサイルを使用するまでもなく、砲撃事件が発生した延坪島(ヨンピョンド)のように、通常の榴(りゅう)弾砲を用いてソウルを攻撃することが可能です。 日本に対しては、弾道ミサイルが主な攻撃手段になりますが、ノドンミサイルの保有数は、200発を越えるとされます。たとえ日本側が100%の確率で迎撃できたとしても、迎撃ミサイルの数自体が足りません。また、最近になって頻繁に目撃されるようになったビニール風船によって、化学兵器や生物兵器、あるいは放射性廃棄物をばらまくことも可能です。特に、放射性廃棄物を使ったダーティボムは脅威です。風船一つで、福島原発事故並の被害を発生させられるでしょう。 一方、北朝鮮がICBMを発射したとは言え、あのICBMが戦力として実効性のあるものであるのかは、極めて不透明ですし、数も予備があるのかさえ分かりません。 北朝鮮がICBM火星14の発射として映像として公開した映像を見ても、1回目の映像では、車両から切り離した後、かなりの時間をおいて発射していることは明らかです。また、ミサイルの下にある発射台のようなものに給電のための発電機やバッテリー、コントロール装置が見当たりません。また2回目の夜間発射の際には、明らかに地下施設があることが分かる映像も含まれていました。つまり映像に映っていた車両は、運搬車でしかなく、発射管制機能は、地下にあったと思われるのです。 もちろん、発射管制車両の開発には、それほど長い時間を要するとは思えません。しかし、今回の発射が、かなり急いで実施されたものであることは分かります。 北朝鮮がICBMの大規模な生産に移行していないため、たとえ米国に向けて発射しても、ICBMは迎撃されてしまう可能性が大です。 アメリカはICBM迎撃用のGBIと呼ばれるミサイルをアラスカのフォートグリーリーとカリフォルニアのヴァンデンバーグに配備しています。実際にICBMを迎撃する実験は、配備後も実施されていませんでしたが、北朝鮮による相次ぐミサイル発射を受けて、本年5月に実施し、成功しています。 トランプ大統領は、今までのアメリカ大統領が行ってきた、国外の問題への積極的な関与を批判し、第二次大戦以前のような、孤立主義的な方向にアメリカを向かわせるとして大統領に当選しました。そのため、北朝鮮がグアム近海にミサイルを撃ち込んだとしても、地上戦まで行い、北朝鮮の非核化を実力行使で行うとは考えられません。