「ママ、おうちがプールだよ」念願のマイホームが雨漏り地獄。なぜ欠陥住宅を掴まされてしまうのか?
「天井のコンクリートが突然落ちてくる、室内がエアコンをつけても40℃近くになる、壁から滝のように水が流れてくる……私の元には、こんな信じられない欠陥住宅に関する悩みが日夜寄せられてきます。現代の住宅事情は本当にひどい。現場監督のスキルや、企業の遵法精神など、全体的な力が落ちているのを肌で感じます」 こう語るのは、日本建築検査研究所の岩山健一さんだ。一級建築士であり住宅検査のエキスパート。24年にも渡り、欠陥住宅の検査に当たってきた人物だ。欠陥住宅の恐ろしさについては、過去の回でも報じたが、幸田早苗さん(仮名・32歳)は、この季節になると憂鬱になる。 「東京の狭小住宅を手に入れたのは3年前。夢のマイホームでしたが、入居以来、雨が降る日は本当に憂鬱です。特に梅雨と台風の季節は大嫌い……その理由はひとつ、雨漏りです。とにかく酷いんですよ……。雨漏りが起こるのは古い家だけだと思っていたので、本当に驚いています。まさか新築の家でタライやバケツを部屋中におかなきゃならない日がくるとは思っていませんでした」 事の発端は3年前、入居後1ヶ月経った頃だった。梅雨入りと同時に雨が降り続き、早苗さんは引っ越しの片付けがままならないと感じていたという。 「1週間くらい、雨が降ったりやんだりでなかなかテンションが上がらないなと思いながら片付けをしていましたね。とはいえ、念願のマイホーム。それまで住んでいたマンションに比べると広いし、何より自分たちでいろいろとアイデアを出して建てた家だったので、満足度はすごく高かったんです。室内はなるべくモノを置かないように備え付けの家具をしっかりと配置してもらったので、前の家で使っていたタンス類はすべて捨てました。 リビングにあるのは、ローテーブルと3人がけソファー、1人がけソファーに壁掛けテレビだけ。すっきりとした室内をみるのは嬉しかったですね」 早苗さんはその頃妊娠8ヶ月を迎えており、有給を使い、在宅の週4勤務に変更して仕事をしていた。このため、平日の1日は片付けに費やしていたと話す。 「その日も朝から夫と上の子を送り出して、ある程度の家事をしてから、片付けをしていましたが、昼ごろになると急に眠気が襲ってきたので、ソファに横になっていたんです。しばらくうとうとしていたんですが、どこからか聞き慣れない音がすることに気がついたんです」 ーぴちゃん、ぴちゃん、ぴちゃん…… それは明らかに水が滴る音だった。 「まず思いついたのは、洗面所やお風呂場。これまでも蛇口のハンドルがちょっとズレていて、水が滴っていたことがあったので。でも今回はどちらも違いました。キッチンや外の水道など、家中のありとあらゆる水回りをみてまわりましたが、原因がわかりません。でもソファに座るとやっぱり聞こえるんです。水の滴る音が。我が家は大きな窓があるので、外の音が聞こえやすいのかな? とも思いました」 決定的な原因を探すことができないまま、お迎えの時間がきてしまった。保育園で子どもをピックアップして帰ると夫もちょうど帰宅したところで、子どもは3人で夕食が食べられることをいたく喜んでいたという。 「娘が階段を一目散に上がっていって、それを夫が追いかけていました。幸せな後ろ姿だななんて呑気に眺めていたんですが……」 先に2階に上がった娘が何か叫んでいる。 ーママー! お部屋プール! 早苗は耳を疑った。そして、次に夫が「うわっ」と大きな声をあげた。 嫌な予感を感じながらも2階へ向かう早苗さん。後編では、驚きの惨状を招いた原因をレポートする。 取材・文 悠木律