なんとコルベットが「ハイブリッド」しかも「AWD」ってアリ!? ついに日本を走った「E-Ray」はどんなクルマ?
シボレーのファンのための1日にコルベットE-Rayを初公開
現行モデルで第8世代となるシボレー・コルベット(C8)。初代C1型の発表から現在に至るまでの70年の歴史のなかには、さまざまな話題があったが、このC8ほど多くの感動をカスタマーやファンに与えてくれたモデルはないのではないだろうか。 【写真】今度残すベットはマジで凄い! シボレー・コルベット「E-Ray」の詳細画像(全80枚) まずは何といってもその基本設計がこれまで継承されてきたフロントエンジンから、伝統のV型8気筒エンジンをリヤミッドに搭載する形式へと改められたこと。横置きのリーフスプリングも廃止され、一般的なコイルスプリングによるダブルウイッシュボーンタイプのサスペンションが新設計された。 ボディデザインがより前衛的で高性能なものに進化したことや、ベーシックな「コルベット」に続いて、高性能版の「Z06」などの導入が、いずれも右ハンドルで行われたことも、日本市場での使い勝手を考えれば賢明な選択といえただろう。 だが、C8型コルベットにはさらなるストーリーがあった。それはコルベットとしては初の電動化&全輪駆動モデルとなる「E-Ray(イーレイ)」の発表だ。 6月1日に静岡県の富士スピードウエイで開催された「シボレー・ファン・デイ」でジャパン・プレミアされ、フルコースを使用した走行シーンまで披露したE-Rayは、2024年6月7日からシボレーの正規ディーラーネットワークで予約が開始されるHVモデル。価格は2350万円。 ミッドに502馬力の最高出力を誇る6156ccのV型8気筒OHV、すなわち最新のLT2型エンジンで、数えて5代目となるこのアルミスモールブロックのLT2型ユニットでは、新たに吸排気系のリニューアルやポート長、スロットルバルブ径の拡大といったさらなるチューニングが、先代から施されている。
エンジンとは完全独立したモーターで前輪を駆動するE-Ray
オイルの供給システムはもちろん低重心化に貢献するドライサンプ。3個のスカベンチングポンプをもち、サーキット走行などでの大きな横Gにも耐える性能を有しているのも特長だ。ミッションは8速デュアルクラッチを採用している。 そしてこのE-Rayにとって最大の特長ともいえるのが、フロントアクスルに組み合わされるエレクトリックモーターだ。最高出力で162馬力を発揮するこのモーターは、コクピットのセンタートンネル内に配置される1.9kWhの容量を持つリチウムイオンバッテリーから電力を得て前輪を駆動。後輪は前で触れたLT2型エンジンからの出力でその駆動力が担われる。 「eAWD」と呼ばれるこのシステムの効果は大きく、エンジンとモーターには一切の機械的なつながりはないにもかかわらず、その綿密で正確な制御によって、あたかもさらに強力な自然吸気V型8気筒エンジンを搭載しているかのような、そしてコーナリングでは前輪のトラクションが、コーナーからの脱出に大きな効果を生み出すことは間違いない。 参考までにシステム全体の最高出力は664馬力。この数字の説得力は大きい。 E-Rayに設定されるドライブモードは「ツアー」、「ウェザー」、「スポーツ」、「レーストラック」、「マイモード」、「Zモード」、「ステルス」、「シャトル」の8つ。このなかでエレクトリックモーターのみによる、つまり前輪駆動のゼロエミッション走行を可能にするのは「ステルス」モードで、その最高速は72km/h。最大航続可能距離は4.8~6.4kmと発表されている。 はたしてシボレーは、このE-Rayを皮切りに、アメリカ伝統のスポーツカーブランドをどのように進化させていくのだろうか。そしてその先には、他社のようにPHEVやBEVの時代が待っているのだろうか。参考までにこのE-Rayは、すでに0-60マイル(約96km/h)を2.5秒で加速するだけの運動性能を主張している。
山崎元裕