【MLB】今季FAとなるヤンキースのソト 来季もジャッジとのコンビは継続なるか
【MLB最新事情】 ヤンキースのフアン・ソトはこのオフにFAになるが、チームとしてはぜひとも引き留めたいだろう。10月25日に誕生日を迎え、26歳と若いためスコット・ボラス代理人は5.7億ドルの大型契約を求めると噂されている。彼が今年ヤンキースに入ったことで、アーロン・ジャッジは2022年の62本塁打のシーズンをも凌駕する最高のシーズンを送った。OPS1.159、打率.322、出塁率.458、長打率.701、すべて自己ベストだった。50-50を達成した大谷翔平が今年もア・リーグのチームに在籍していたとしても、MVPはジャッジのものだったと見られている。 【選手データ】フアン・ソト プロフィール・通算成績 ソトが二番で156試合、ジャッジが三番で158試合のスタメン出場。ソトもキャリアベストの41本塁打、128得点だった。ソトの素晴らしさは、まずは選球眼にある。今年も三振(119)より四球(129)のほうが多かった。メジャー7年で四球より三振のほうが多かったのはMLBデビューした18年と2年目の19年だけで、通算出塁率は.421だ。 それでいてパワーもメジャー・リーグトップレベル。ハードヒット率(95マイル以上の速い打球)は57.0%でジャッジ、大谷に次ぐ3位。バレル打球の数も同じ順番で91球の3位。110マイル以上の超高速本塁打も17本の4位である。最長飛距離は447フィート(約136メートル)だった。 実は今季のヤンキースは、この2人は素晴らしかったがアンソニー・ボルピー、グレイバー・トーレス、アレックス・バーデューゴ、ジャンカルロ・スタントンらほかの打者がいま一つだった。そこでトレードデッドラインで、マーリンズからジャズ・チザム・ジュニアを獲得しなければならなかった。ポストシーズンではスタントンが5本塁打11打点と活躍、トーレス、ボルピーもそれなりに打っているが、長い公式戦では信頼を置けない。 ソトの技術の素晴らしさは現地時間10月19日に行われたア・リーグ優勝決定シリーズ第5戦、延長10回の3点本塁打を見れば明白だ。相手はガーディアンズの好投手ハンター・ガディス。早いカウントでは打っても凡打にしかならない低めのスライダーを見逃し、1-1のカウントからはコーナーに投じられたスライダーやチェンジアップを4球連続ファウルにして粘った。苛立ったガディスが7球目、外角高め、ボール気味に95マイルの直球を投げると、待ってましたと言わんばかりにフルスイング。中越えに叩き込んだ。ただバットを振るのではなく、投手と駆け引きをして、狙っている球種に誘導した。緻密な上に力強さも兼ね備えている。 ソトとジャッジが並ぶ利点は左打者、右打者というだけではない。バットのスイング角度で見ると、ソトは横振りで高めの球を確実に仕留められる。対照的にジャッジは縦振りで低めを見事にすくい上げる。そのため投手は彼ら2人に対しまったく異なるアプローチを取らざるを得ず、投球がさらに難しくなる。 今から100年前、ヤンキースはベーブ・ルースが三番を打ち、8歳下のルー・ゲーリックが四番に定着したことで、歴史に名を刻むワンツーパンチを形成できた。32歳のジャッジにとって、6歳年下のソトが長年ヤンキースに留まってくれれば、今年のような成績を長く維持できる可能性がある。ソトにとっても、ニューヨークの街やヤンキースタジアムがぴったりな場所のように思える。 文=奥田秀樹 写真=Getty Images
週刊ベースボール