害虫トマトキバガの分布拡大 世界137カ国・地域で農業被害
20世紀前半に南米ペルーで発見され、2006年末にスペインで初侵入が確認された病害虫、トマトキバガが、世界7割の国・地域に分布を広げたことが分かった。欧州を含むユーラシアとアフリカのほぼ全域を席巻し、日本では21年10月に熊本で見つかって以降3年間で全47都道府県に広がった。地球温暖化を背景に生息域が地球全体に広がっており、国連は「食料安全保障や環境、健康への脅威」と警告する。 世界地図で見るトマトキバガが確認された国・地域 日本農業新聞が、農水省、米国農務省(USDA)、欧州地中海地域植物防疫機関(EPPO)、各国政府の公表資料、海外報道を集計、分析した。 それによると、12月上旬までに世界約200の国・地域のうち137で侵入や農業被害が発生。アフリカを中心にユーラシア、南米など気候帯に関係なく分布が広がっている。 アジアでは25カ国・地域の半数に当たる12カ国・地域で確認された。イランではハウス・露地栽培のトマトが軒並み被害に遭い、損失額は年間3500万ドル。韓国では4月に初めて侵入が確認され、一部産地では壊滅的な被害を受け、トマトの市場価格が高騰した。 日本では最後の未確認県だった山梨で11月11日、成虫個体を発見。農水省は、自治体などに農薬による防除、食害された葉や果実を畑に埋める耕種的防除を指導。水際では71カ国・地域からトマトやインゲンマメなどの輸入に検査証明書を求めている。 一方、北米やオセアニアでは侵入・被害が確認されていない。USDAは「トマトキバガがまん延している」108カ国・地域からトマトなどの輸入を規制し、自給体制を拡大。オーストラリアは「バイオセキュリティー対策と検疫強化により国内の生息はない」(同国農水省)とした。 国連食糧農業機関(FAO)は、トマトキバガを「最も重要な侵略的害虫の一つ」とし、5カ年戦略を策定。加盟国に対し、防疫対策の強化や、生産者の管理技術・能力の向上などを求めている。 (佐野太一、栗田慎一) <ことば> トマトキバガ トマトを中心にナス、ピーマンなどナス科とインゲンマメなどマメ科に取りつき、幼虫は葉や茎に潜って食害、果実にも食入する。日本で使える殺虫剤は「フルキサメタミド乳剤など45剤。殺虫剤性の報告もある。
日本農業新聞