溝がなくてもスピンはかかる!? ウェッジの溝の“本当の役割”をクラブ設計家が教えてくれた【クラブ選びをクール解説!】
「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回のテーマはウェッジの溝。スコアラインとスピンの関係について教えてもらった。
溝が一番効果を発揮するのは雨の日
みんゴル取材班(以下、み):キャロウェイの新作ウェッジ「オーパス」はスコアラインの数を2本増やしたことを売り文句にしています。年初に発売されたピン「S159」も3本増やしたとか。溝が増えればスピンも増えると考えていいですか? 宮城:一概にスピンが増えるとはいえません。まず、溝には細かなルールがあって、溝の本数を増やすなら、1本1本の溝を細くしなくてはいけません。また、溝が影響することは確かですが、スピンは溝だけでかかるわけではなく、打ち方やライなど条件によって大きく増減します。昔、「MT-28」を作ってツアーに持ち込んだときに、面白いようにスピンがかかるのでプロがばんばん打ち続けたことがありました。最後は泥で溝が完全に埋まってもまだスピンがかかっていました。そのときはプロと溝っていったいなんなのという話になりました。 み:確かマスダゴルフの増田雄二さんだったか、試しに溝なしウェッジを作ってみたら一番スピンがかかったという話を聞いたことがあります。 宮城:それはあり得ますね。溝が減ってきてスピン量が減ることもありますが、まったくなくてもスピンはかかります。フェースとボールの接触面が増えて、フェースにボールが乗る時間が長いほどスピンは増えます。 み:そうなると溝にはどんな役割が? 宮城:溝が一番効果を発揮するのは雨の日です。溝の本数を増やせば水が逃げやすくなるのでスピンが減りにくくなります。 み:なるほど。溝が多いとバンカーショットのスピンも増えますか? 宮城:溝で砂は逃がせません。むしろ恩恵があるのは短いアプローチです。5ヤードとか10ヤードを打つときにボールは変形しないので、溝の本数を増やして溝の角で引っかかりやすくすることでスピンを増やせます。逆にフルショットなどヘッドスピードが速くなるとボールが潰れて接触面積が増えるので溝は必要なくなります。プロがフルショットをするとボールが戻りすぎてしまうので、フルショットが多い46度や48度だけわざと溝のピッチを狭くして接触面積を減らし、スピンが増えすぎないようにしているウェッジもあります。 み:溝ではありませんが、フェース面を平滑に加工することで接触面積を増やしスピン性能を上げるという話も聞きます。確か「MT-28」もフェース面がミーリング加工されていましたね。 宮城:フェース面が平滑なほど接触面積が増えるというのは迷信です。そこまでしなくともボールはゴムで潰れるので接触面積は確保できます。ミーリング加工を行うのは深さや太さなどスコアラインの彫刻を精密にするためです。
みんなのゴルフダイジェスト編集部