【療育の専門家がレクチャー】発達障害のある子どもには家でできる「お手伝い療育」がおすすめ。食器をさげるお手伝いから、慎重さが学べる
食器をさげる
今回のテーマは「食器をさげる」です。 ■対象年齢 2歳~ ■期待できる効果 ・食器を落とさないように気を付けて流しまで運ぶことで、「慎重な行動」を経験できる ・食器の重さや大きさに応じた持ち方、運び方を経験できる ・自分が使ったものは自分で片づけるという自立心が育つ ・食器をさげるときのルールを理解し、そのルールを守ることができる ・(高年齢児)油ものやご飯粒のついたものを分ける認知力が育つ ・家族の役に立つ経験ができる ■準備 食器をさげて片づけるときのルールを決めます。「状況に応じて」が苦手な子どもは多いです。最初に明確なルールを決め、分かりやすく伝えましょう。ルールは、年齢、住環境などに応じて各家庭に適した形で決めます。 例えば以下のようなことをあらかじめ決めておきます。 ■運ぶ皿とタイミング ・保護者にお願いされた皿だけ運ぶ ・自分の使った皿を運ぶ ・自分が食べ終わったら自分の使った皿を運び、家族が食べ終わったら家族の皿も運ぶ など ■皿の処理 ・食器をさげる前に保護者が残飯の処理をするのか、子どもが処理するのか ・テーブルでは処理せずに流しまで運ぶのか ・運んだ皿はどこに置くか など
子どもに伝える手順
1.食器は一つずつ両手で運ぶように伝えます。年齢が上がってきたら、食器を重ねて運ぶようにしてもよいです。大きい平らな皿を下に、その上に小さい器を重ねて、両手で運びます。 2.まず保護者が、片づける食器を両手で持ちます。できるだけ水平に持つ持ち方をやってみせて伝えます。 3. 流しまで運んでみせます。 4.流しのどこに置くかをわかりやすく伝えます。 ■上級者編 慣れてきたら、食器の状態に応じた適切な処理を伝えます。そして、子ども自身が食器の状態を判断し、処理 ・油ものの皿は油をふき取る、別の場所に置く、上に他の皿を重ねないしてもらいます。 ・ご飯茶碗は水を張った洗い桶に入れる ■ことばがけのポイント 決めたタイミング(子どもが食べ終わったら、とか、全員が食べ終わったら等)で子どもが自発的に食器を片付けるのを待ちます。 各タイミングでの声かけ ① 自発的に食器を片付け始めたとき 「さすが!」「すばらしい!」「いいね、いいね」「かっこいい!」 ② 食器を運んでいるとき 食器をさげる行動がスムーズにいくようにことばをかけます。 オノマトペ(そ~っと、ジロジロ、ぎゅっなど)を使うのも有効です。 「ゆっくり持っていこうね」「まわりを見ようね、ジロジロって。そうそう」「両手でぎゅっと持ってね」 ③ 食器さげが終わる直前 「あと少し」「頑張ってるね」 ④ 食器さげが完了したとき 「クリアー!」「やったね」「素晴らしい」「ママ、うれしいな!」 ■気をつけること 1.自発的に食器片づけを始めない場合 まず、食器を指さし、続いて流しを指さす、保護者が子どもの皿を一枚持って流しまで運んで見せるなどして、気づかせるように働きかけます。 「お皿運ばなきゃだめでしょ」など、注意をする、叱る、ことをしないように心がけたいです。 2.小さい子どもの食器は落としても危なくない素材の食器を選びます。 3.食卓から流しまでの動線上には、おもちゃやTVなどの気が逸れるものは置かないようにします。食卓から流しまでは近いほうが達成率は高くなります。 4.さげる食器が多すぎるとやる気にならないことがあります。はじめは食器1枚だけ残して、あとは保護者が流しに運び、その様子を見せる、そして、最後の1枚だけを子どもに流しに運んでもらうので十分です。その1枚の皿を運ぶ子どもに、「運べたね。がんばったね。」と温かい賞賛とねぎらいのことばをかけてください。 5.派手にほめすぎると、委縮する子どももいます。その子にとって心地よい賞賛のことばを探りながら、関わってください。