【祝101歳】「愛してるとかそういう言葉、大嫌い」佐藤愛子さんの意外な“ごひいき”
出演者の顔ばかりを見て、面白がっていた
桃子 祖母はテレビが大好きで、半年くらい前も国会中継をずっと見てました。わかってるかなと思っていたら、「いろんなタイプのハゲがいるね」って(笑)。本にも書きましたが。 響子 ニュースは新聞で読んで、テレビはワイドショーやバラエティ番組。「サンデープロジェクト」では議論そのものより、出演者の顔を見てたんだと思いますよ。 桃子 私も感じることですが、議論をしている人の一生懸命さって、おかしみがある。祖母はそれを面白がっていたんじゃないかな。 響子 議論は理屈ですが、母は理屈の世界には関心がない。だけど理屈を語っている人の人間性には関心があるんです。それって作家の目線だと思うんですよね。 桃子 そもそも政治には関心ないよね。 響子 20年くらい前、参院選の女性候補者に頼まれて、応援することになったんです。友人知人にその人の名前を伝えて勧めてたんだけど、投票に行った知人が「その人の名前ありませんでしたよ」って言ってきて。よくよく調べたら立候補してたのは次の選挙だった。「私が推薦してる人は何の選挙に出るんだろうね」って。(笑)。 ――佐藤さんは折々に“時の人”としての政治家を書いた。田中真紀子氏もその1人。外務大臣に就任した直後に、氏が「新入社員が理想とする女性上司のトップ」に選ばれたことを書いている(東京新聞・01年5月23日)。〈田中女史を私は嫌いではない。友達としてなら面白くていい。だが「上司」ということになると、どうだろう? 長老に辛辣なことをいうように、部下に対しても辛辣にちがいないと思うからだ〉(『不敵雑記 たしなみなし』集英社文庫)。的確すぎる。 ――佐藤さんは2番目の夫で響子さんの父(作家の田畑麦彦氏)が会社を倒産させたことで、莫大な借金を背負った。直木賞受賞作『戦いすんで日が暮れて』でその顛末を書き、最後の小説『晩鐘』の題材は田畑氏。「クロワッサン」では田畑氏について語っている。〈彼が起こした現象に対して怒りはするけれども、その本質的なところではね、彼は彼なりに一生懸命生きてるんだと思っていました〉 響子 そういうふうに思いながら、帰ってきた夫に水をぶっかける(笑)。それが母の活火山なんですよ。彼は悪い足を引きずって一生懸命金策に走っている、遊んでいたわけじゃない。そうわかっていても、活火山が水をぶっかけちゃうんです。 ――「クロワッサン」はこう続く。〈そんなふうに話すと『晩鐘』の読者が“やっぱり佐藤さんはご主人を愛しておられたんだわ”とかって言うんですよ。もうムカついてね、何を寝言言ってるんだと〉