宇宙×エンタメが宇宙を身近にし、次代へつなぐ【SENSORS】
中西さんも、打ち上げを見にいくという体験をエンタメ化することに賛成だ。 「打ち上げ自体、お祭りにできますよね。発射場で1つのフェスティバルができるといいなと思います」 宇宙に行かない人たちが打ち上げを見に来るという現象が、今後、当たり前になるかもしれないと、新谷さんはいう。 「宇宙に行かない人も発射場に来るという世界は、すぐそこにあると私は思っています。自分は海外へ行かなくても空港へ行くだけでわくわくするみたいな、あの感覚を多くの人に体験してほしいです」
■宇宙は、価値観を大きく変える
宇宙がもっと身近になれば、私たちの考えはより柔軟になり、世の中はよりフラットになると語るのは、中西さんだ。 「宇宙には上下がなく、宇宙ステーションでは人はくるくる回っています。上と下って、地球の重力下だから生まれた概念だと思うんです。宇宙に行ったら、みんなもっと考えが柔軟になって、売上とか、上司・部下とか関係のない、フラットな世界になるかもしれないですよね。そういう発想はおもしろいと思いますね」
新谷さんも、宇宙へ行くと世界観が変わるはずだと考えている。 「宇宙飛行士の方が、宇宙から帰って地上に降り立ったときの草の匂いが忘れられないとおっしゃっていたのが印象的です。こんなにいい匂いがするんだと感動したそうです。地球で生活していれば当たり前のことも、宇宙から帰ると特別で、生きてることをより強く実感できるのではないでしょうか」
■宇宙という言葉がなくなる=宇宙が近くなる!?
そもそも“宇宙が身近になる”とは、どういうことなのだろうか。宇宙という言葉を使わなくなったときが、そのときなのではないかと、中西さんはいう。 「私たちは、アプリを使うとき、インターネットを使うとは言いませんよね。知らず知らず何かの裏側に宇宙の技術が使われているという状況こそが、宇宙が近くなっているということなのかもしれません」 新谷さんも「宇宙ビジネス」という言葉が、宇宙を遠く感じさせている気がすると、中西さんの意見に同意する。 「宇宙って、場所ですからね。海ビジネス、山ビジネス、地上ビジネスとは言わないのに、宇宙ビジネスというと、宇宙だけすごく遠い気がします。大きなリスクやお金がかかり、手が届きづらい産業だから仕方のないところもありますが、もうその障壁を乗り越えられるところまで来ていると思うので、みんなが関わって当たり前という分野になってほしいですね」 みんなが宇宙に関わる世の中にしていくためには、エンタメやメディアの力が欠かせない。新谷さんは、エンタメやメディアには、女性や若い世代が宇宙に興味を持つきっかけ作りを担ってほしいという。 「仕事をしていると何十人の会議に女性が1人だけというようなことが殆どなので、エンタメやメディアを通じて、宇宙に関わる女性が増えてほしいですね。それから、若年層やさらに下の子どもたちにも影響を与えてほしいです。宇宙は100年後、200年後にも続くものであり、大きな産業だと思うので、ぜひ宇宙のことを後世に伝えてもらいたいです」