臓器提供者の特技や性格が宿る“記憶転移”は現実に起こり得ない⁉ 臓器移植から始まる恋、ネトフリドラマ『さよならのつづき』を専門医が解説
臓器売買のリスク
さらに、気になる点としては、ドナーとレシピエントの接触だ。ドラマ内では、臓器提供者である雄介の恋人・さえ子と、レシピエントの成瀬が偶然出会ってしまうわけだが、実際のところどうなのか。 「この部分はとても大事なところで、日本ではドナーとレシピエント、お互いの情報を明かすことは禁じられています」 一体なぜなのか。 「まさに臓器売買のリスクがあるからです。 例えば、情報を明かした場合、レシピエントはドナー側の家族にご挨拶にいくわけですよね。その際、日本では菓子折りを持っていくのが定番ですが、向こうは亡くなったのに、こちらは、いただいた臓器のおかげで死の淵から生還してるんです。 菓子折りだけで済みますか? つまりお互いを会わせると、お金が動くリスクがあるんです。 逆に、ドナー側の家族からお金を請求されるケースも考えられる。つまり、身内が不慮の病気や事故で亡くなる際に、『提供側からお金もらえるんだったら臓器提供しようかな』という発想も生まれかねない。だから情報は明かさないんです」 決して会うことはないドナーとレシピエントだが、現実でもこんなドラマのような展開も。 「提供した側のご家族と、提供を受けて元気になったレシピエントが偶然会うってことは現実でもあります。ドナー家族の会や講演会、また日本移植者協議会や移植者スポーツ大会もあって、そこにドナー側の家族が行って話をしていれば『あっ、臓器はこの人に移植されたのかな』と察するケースもあるそうです。公式には教えないけど、何かのきっかけで知り合うことはなきにしもあらずですね」 取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部
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