『SUMMER SONIC Bangkok 2024』に行ってきた タイ&サマソニらしさ溢れた華やかな音楽空間
<土井コマキのアジア音楽探訪 Vol.7> 8月24日、25日の2日間、タイ・バンコクの郊外にあるインパクト・チャレンジャーホールで開催された『SUMMER SONIC Bangkok 2024』に行ってまいりました。毎年、東京と大阪で開催される日本屈指の音楽フェス『SUMMER SONIC』が、この数年個人的に注目してきたタイで開催されるなら、どうしても目撃したかったのです。会場内に入ってすぐに、ユニークなデザインの看板がお出迎え! 【写真】『SUMMER SONIC Bangkok 2024』体験レポート 会場は大阪で言うと私が番組を持つFM802のフェス『RADIO CRAZY』を開催しているインテックス大阪のような、広いメッセ会場。巨大な空間を2つのゾーンに分けて使用していました。片方に花道もあるような巨大なステージ「MEGA STAGE」、もう片方にはフードトラックや、作り込まれた設えのスポンサーブース、タイのクリエイターによる衣類や雑貨の出店ブース、コスプレやタトゥーシールのサービスブース、さらにタイマッサージ店まで揃い、その中央に小さめの「RISING STAGE」が配置。2日間でMEGA STAGEに20組、RISING STAGEに13組が出演して、昼過ぎからなんと深夜24時を過ぎるまで、ライブが繰り広げられました。「MEGA STAGE」のスクリーンが大きくて、映像も照明もめちゃくちゃく綺麗で派手! 花道もあるので、本当に華やかでした。 イベントグッズとして、タイらしいヤックという魔除けの守護神のイラストが描かれたサマソニTや、サマソニロゴがあしらわれたタイパンツなんてものもあって可愛かったです。タイのクリエイターの雑貨を色々買ってしまいました。物販には使えないのですが、場内の飲食代金は、専用チップにトップアップして支払います。あまり日本では見ないシステムだけど、韓国のフェスでもこの方式だったなぁ。ラクといえばラクですが、払い戻しできないので注意が必要でした。 気になるフェス飯は、日本のたこ焼きや、韓国のチーズハットグなどもあって、同じようなラインナップなんだなと。面白かったのが、ガリガリくんのサンプリング! タイの人たちは全然寒くなさそうだったけど、私なんて長袖パーカーを着ていたにも関わらず風邪を引いちゃったくらい、場内はクーラーが効いていて、ストレートにいうと寒かったのに、ガリガリくん! 嬉しくって、寒いのに食べましたけど! タイでもガリガリくんは人気でした。 さてさて、肝心のライブですが。結果から言うと、とってもサマソニっぽいイベントだったなと思います。もちろんステージの数など規模感は違うけれど、国内外のスターが肩を並べ、ロックバンド、シンガーソングライター、ボーイズグループ、そして国内のネクストライジングなアーティストにも出演枠が用意された、出会いもある場となっていました。 タイのアーティストからは、サマソニ東京に2回出演経験もあるPhum Viphuritがグローバルアーティストとして流石の演奏を見せつけたり、大御所バンドのBODYSLAMがタイのHIP HOPアーティストでプロデューサーのF.HEROと日本のBABYMETALとのスペシャルなコラボで会場を興奮の渦に巻き込んだり、今年のサマソニ東京&大阪にも出演したシンガーソングライターであり俳優でもあるヴィオレット・ウォーティアとBRIGHTも良い歌声を聴かせていました。SuedeやOneRepublicなど世界的なスターバンドと、YOASOBIのようなアジアライジングなアーティスト、BOYNEXTDOORやZICOという韓国からの大きなうねり……そこに「RISING STAGE」の方では、ルークトゥンやモーラムと呼ばれるタイ独自の昔ながらのポピュラーミュージックを鳴らすバンドやグループが登場して、お客さんを沸かしていたのが、なんともタイらしくてめちゃくちゃ面白かった。このボーダーレスな感じ、めちゃサマソニですよね。そしてびっくりするくらい、タイの人たちって、音楽に合わせて変幻自在に乗り方を変えることができてすごい。何が来ても合わせられるんですよ。しかも瞬間的に! UKロックで踊っていた人が、ヘンリー・ムーディーに黄色い声でキャーキャー言って、タイ歌謡モーラムで独特の手踊りをしたのち、YOASOBIで腕を上げている……そう、どのアーティストのパフォーマンスにもしっかりと歓声をあげるんです。その曲を知っているかどうかは問題じゃなくて、そこでのパフォーマンスに反応して、しっかり拍手も声援も送る。例えば、しっとりとしたイントロののちボーカルが気持ちをこめて歌い出したら、まず歓声! ギターソロにももちろん歓声! 1曲ごとに拍手喝采。感動しました。いつもそうなのかもしれないけれど、私には初開催のサマソニへの拍手のように聞こえました。アーティストにとっても、あんなふうに迎えてもらえたら、嬉しいだろうし、かけがえない経験として刺激を残すだろうなぁ。 個人的に印象に残っているシーンは、まずAURORA。真っ赤なドレスで現れたAURORAが、妖艶に、儚く、鋭く、力強く、曲ごとに表情がどんどん変わるボーカルと、アーティスティックな美しい映像、緩急のあるセットリストによって、完璧なショーを作り上げていて圧倒されました。AURORAがプログレスプライドフラッグ(レインボーフラッグの6色に、白・ピンク・水色のトランスジェンダーカラー と、茶色と黒の人種的マイノリティを表すカラーが加えられた旗)を掲げた瞬間の会場の歓声が忘れられません。フラッグを掲げて、花道を踊り駆け抜ける姿は本当に美しかった。AURORAの言うとおり、誰もがそのままで美しい。